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INTERVIEW

国立成育医療研究センター

小児科

矢作 尚久

医療のスマートグリッドを目指して

「119」に電話をすれば救急車が来てくれる、というように、日本で暮らす私たちにとって、医療はあって当たり前の存在です。しかし、救急車のたらい回しが問題となっているように、最適な医療が受けづらくなっている現実もあります。今回お話をお伺いしたのは、小児科医でありながら医療におけるシステムデザインイノベーションの戦略家として様々な戦略的事案に携わっていらっしゃる矢作尚久先生(国立成育医療研究センター)です。
全国を飛び回りながら小児の薬に関する副作用情報の収集・分析を行っている矢作先生に、医療のICT化、ひいては医療政策への取り組みについてお話しいただきました。

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小児医療の情報を“適切“に集めるための戦略

先生の現在のお仕事について、お聞かせ下さい。

国立成育医療研究センターで、子どもたちに使う薬の副作用情報を集めています。また、それを解析する具体的な方法を考えています。最近の例で言えば、子宮頸がんワクチンなどがあります。

なぜ子どもの薬の副作用情報を解析しようとしているのですか。

そもそも、小児の薬の情報が、医師の間でも意外と不足しているということがあります。製薬企業が新薬を開発して製造承認を得る際は、大人が使った場合の効果を元に申請を行っているのですが、子どもに使用する場合の承認は取らないことがほとんどなのです。そのため、小児科医が処方する薬のうち7割くらいは「適応外使用」という形で、医師の裁量権で使っています。このことは医師の中でもあまり知られていません。

また、子どもは大きな錠剤が飲めないので、錠剤をすりつぶしたり、カプセルの中身だけを取り出して飲ませたりすることがあります。しかし、胃や腸など適切な場所で溶けるように作られている薬を、剤型を変えて飲ませた場合に、どこで溶けてどの程度吸収されるのかということは、実はあまり分かっていません。そのため、小児の薬に関しては、このようなことを調べるだけでも非常に有益な情報になるのです。

しかしながら、小児の薬に関する副作用データをいかに集めて解析するか、これがとても難しいのです。子どもがかかるのは小児科や小児専門の医療機関だけとは限りません。そこで、今は小児専門の医療機関10施設に加え、全国の地域のクリニック50施設とも連携して情報を集めています。

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なぜ小児専門医療機関と地域のクリニックから情報を集めるのでしょうか。

小児科やこども病院などといった小児専門の医療機関は特殊な薬をたくさん使っているので様々な情報を得ることができます。しかし、先ほどの通り、全ての子どもが小児専門の医療機関にかかっているわけではないので、もっと広い範囲から情報を集めることが必要なのです。

例えば、子どもが風邪薬を飲んだ後にじんましんが出た場合、親御さんがまず連れて行くのは、たいてい家の近くのクリニックです。したがって、地域のクリニックからも情報を集める必要があります。地域のクリニックと連携するメリットはそれ以外にもあります。例えば食中毒など、その地域で起こったデータを集められるという点です。

深い情報を持つ小児専門の医療機関と、幅広い情報を持つ地域のクリニック。この2つから情報を集める事で、より正確で幅広いデータを分析することができます。私たちはこれを「T字戦略」と呼んでいます。

○ライフ・イノベーション推進のための医薬品使用環境整備事業
小児と薬 情報収集ネットワークの整備(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002pxih-att/2r9852000002pxjy.pdf

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PROFILE

矢作 尚久

国立成育医療研究センター

矢作 尚久

1974年米国Palo Alto生まれ。1991年AFS交換プログラムでベルギーへ留学、2000年 慶應義塾大学医学部卒業(MD)、2004年 同大学院博士課程修了(Ph.D.)。2009年 東京大学医療経営人材育成講座修了(首席)。2011年ハーバードビジネススクールMHDにScholarshipとして招聘され修了を機に、インド・南ア・UAE・ラオス・モンゴル等途上国への医療マネジメントシステムの提供準備を開始。現在、国立成育医療研究センターにて、開発薬事・プロジェクト管理部 臨床研究ネットワーク推進室 室長補佐 情報戦略担当として勤務。
著書に『小児救急トリアージテキスト』(医歯薬出版株式会社)がある。

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