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INTERVIEW

神戸大学

救命救急科

井上 茂亮

自らの役割を考えPICU研究へ

整形外科から、救命救急医学へ進んだ井上茂亮先生。アメリカ留学や山間部の病院勤務での人とのつながりや経験を糧に、高齢者の敗血症を中心に自己免疫疾患に関与する研究を成功させ、現在は神戸大学にフィールドを移し、臨床と若手育成に携わる傍ら、集中治療後症候群(PICS)の研究に着手しています。順調なキャリア形成の背景には、自由と新しさを求める気質と、地元神戸・兵庫県の医療に貢献したいという思いがありました。

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高齢者の免疫疾患からPICSへ

——2018年に神戸大学に着任し、現在はどのようなことに取り組まれているのでしょうか。

大学で若手の育成に関わりながら、日中は臨床業務に携わり、週1回当直も担当しています。着任から半年で、まだ救命救急科の体制を整備中です。その傍ら、限られた時間になってしまっていますが、研究も続けています。趣味のように、PICS(集中治療後症候群、post intensive care syndrome)の基礎研究を始めたところです。

これまでは高齢者の免疫が研究テーマでしたが、現在は高齢者の長期予後をいかに改善するかをテーマにしています。ICUに入室した患者さんが、退室後もなかなかQOLを戻せず、中でも運動機能・認知機能・精神に障害が生じることが多く、日本救急医学会も日本集中治療医学会もこれを認識しています。私自身、日本集中治療医学会でPICSに関連した委員をさせてもらい、解決、対策のために動き出しているところです。

——研究をはじめたきっかけを、お聞かせください。

京都大学で医師になりたての時に、指導医であった戸口田淳也先生(現・京都大学iPS細胞研究所副所長)への憧れから、自分も研究もやると決めていました。研究を始めたのは医師6年目から。最初は高齢者の敗血症をテーマに研究を進めていました。

敗血症に注目したのは医師3年目、救急医になった直後でした。敗血症の患者さんを治療しても、スキッと良くなったことがほとんどありませんでした。外傷の患者さんは血を止めればよくなりますが、敗血症の患者さんは、治るそばから、次々と感染症になっていきます。それで、敗血症は難しいと感じていました。

その後、学会誌で見つけた憧れの先生のもとで研究したいと思い米国へ留学。2年後に帰国したら、ICU入室者が高齢化していることに驚きました。実際にデータをとってみると、留学前の平均年齢は58歳だったのが、60歳に上がっていたのです。そして、国際的な敗血症ガイドラインの通りに治療してもやはり良くならない。そこで研究テーマをつくり、文科省に応募したところ採用いただけて、幸運にも研究室を持つことができました。それで、敗血症を中心に広くは免疫に関して研究を進めてきました。

しかし敗血症を治療し、無事急性期病院から転院させても、1カ月ももたずに転院先で患者さんが亡くなってしまう経験をしました。そこからいかに、長期予後を改善するかまで考えるのが医師としての自分の役割だと思い、PICS研究に着手することにしたのです。

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PROFILE

井上 茂亮

神戸大学

井上 茂亮

神戸大学医学部医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 先進救命救急医学部門 特命教授
兵庫県神戸市生まれ。2000年に香川医科大学医学部医学科卒業、京都大学医学部附属病院整形外科にて研修。2002年からは東海大学医学部付属病院にて救命救急医として研鑽を積む。東海大学医学部大学院医学研究科外科系専攻博士課程修了後、米国セントルイス・ワシントン大学医学部にポストドクトラル・リサーチ・フェローとして2年間在籍。帰国後は東海大学医学部付属病院、バンダービルト大学臨床研究マスターコース、東海大学医学部付属八王子病院を経て、2018年7月より現職。

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