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INTERVIEW

東京女子医科大学医療センター

医療全般

石川 元直

文化で病気の原因を調査するフィールド医学

「文化」と「医療」。一見すると無関係に見えるこの2つの観点から調査を行う医療分野を、「フィールド医学」と呼びます。患者がどのように、どんな家族や仲間と、どんなものを食べながら暮らすのか、日常生活の上でどんな医学的課題を抱えているのかを調査するのです。今回は、様々な海外の僻地にてこのフィールド医学の調査を行う、石川 元直先生にお話を伺ってきました。先生が具体的に行った研究や、この分野に入ったきっかけを、コーヒーを飲みながらぜひ聞いてみましょう!

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ヒマラヤで初めて触れたフィールド医学

先生は「フィールド医学」を研究されているとお聞きしましたが、フィールド医学とはどのようなものなのですか?

簡単に言うと、病院に来る「病人」を診るのではなく、私たちとは文化が異なる場所で生活する人々を調査して、病気のありさまを、自然環境や文化的背景との関連でもう一度病院の外で捉え直そうとする研究領域です。
例えば、病気をどのように受けとめて、その病気に対してどのように行動するかというのは、文化が異なると大きく変わってくるのですが、このことは現地にいってみないとわからないことだったりします
私は、住民が住んでいる場に実際に赴き、住民の生活全て(何を食べ、誰とつきあい、誰とどんな行動をしているのかなど)をその場で見ることによって、食生活だったり環境的原因だったりの問題点を調査しています。

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なるほど。とてもおもしろい医療分野ですね!実際にはどのような場所に行っているのですか?

初めてフィールド医学の調査に参加したのは、インドのラダックというヒマラヤのふもとでした。その時に、標高4,000メートル位の高所にて調査をしたのですが、周りの人たちが皆高山病でダウンする中、なぜか私だけピンピンしていて・・・(笑)
それ以来、自分が高所に強いということがわかり、毎年夏になるとフィールド医学のメンバーとして、1ヶ月単位で中国、ヒマラヤ、アンデスなどの高所での調査を行っています。

 チベットにはうつ病患者が少ないのは?文化と医療の両方でみる

フィールド医学の研究を行うことによってわかったことはありますか?

元々は臨床心理を専門にしていたので、現地ではうつ病の捉え方に関する調査も行っていました。その中で、チベットの人たちは日本人に比べてうつ病患者が少なく、その理由がチベット人の「地域コミュニティーの結びつきの強さ」と「強い信仰心」にあるということがわかりました。
例えばチベット人の場合、近所のおじいちゃんが倒れたら近所の人たちが食事の面倒を見るのは当然ですし、誰ということなく家畜の世話も手伝い、コミュニティー全体で助け合って生きています。

この地域の強い結びつきというのは、日本が発展するにつれて失ったもので、それが原因で日本ではうつ病患者が増加しているという見方もあるんですよ。

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PROFILE

石川 元直

東京女子医科大学医療センター

石川 元直

東京大学卒業後、静岡県藤枝市立総合病院にて初期研修を行い、東大心療内科に入局。内科を幅広く学びたいという思いから、東京女子医科大学東医療センター内科へ出向。心療内科を軸に、感染症や老年医学も幅広く学びながら、フィールド医学と出会い、主に高所環境におけるフィールド医学を研究している。

 

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