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よいコミュニケーションには、言葉以外の要素も重要!?

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わたしたちは表情や所作などの「非言語情報」から多くのメッセージを読み取っています。よりよいコミュニケーションを築くためには、言葉以外の「非言語情報」に気を配ることも重要です。

歌舞伎や能楽は、その中で使われている言葉が現代とは違うので、日本人でも「とっつきにくそう」と感じる人がいます。しかし一方で、多くの外国人がこぞって歌舞伎座や能楽堂に出かけています。彼らは日本語がわからなくても、芸能を楽しんでいるようです。どうやら、セリフの意味がわからないと芸能は楽しめないということはなく、セリフ以外の部分にも十分楽しさがあると捉える方がよさそうです。

歌舞伎役者である坂東玉三郎さんは、こう語っています。

「人と人が同じ場所にいて、相手の姿を目の前にして、その場に流れ漂う空気を共有する。それができていれば、言葉は交わさなくても、コミュニケーションは十分に成り立つはずです。それが心と心のつながり、魂と魂が触れ合うことです。(電通報 2015.01.30.)」

わたしは、このような「言葉以外の部分」に、よりよいコミュニケーションのヒントがあると考えています。

わたしたちは他者とコミュニケーションをとるとき、音声や文字などの言葉で伝えあう「言語情報」と、表情・所作・空気・リズムなど、言葉以外で伝えあう「非言語情報」の二つを使っています。歌舞伎や能楽の「セリフ以外の部分」は、「非言語情報」にあたるといえるでしょう。

イメージしていただきたいのですが、あなたが人から褒められるとき、真顔で美辞麗句を言われるのと、言葉はありきたりでも、アイコンタクトやあいづち、表情や身振り・手振りなど、共感の態度を交えて言われるのとでは、どちらがうれしいでしょうか。「非言語情報」の態度に気持ちが表れているほうが、真に迫った感じを受けるのではないかと思います。

このように、「非言語情報」には大きな意味があります。これをうまく取り入れることでよりよいコミュニケーションを実現できるようになるのです。

とはいえ、いきなり「非言語コミュニケーションを取り入れよう」と言われても、戸惑う方も多いかもしれません。しかし、コミュニケーションの基本は、相手に不快感を与えないことです。お互いの姿を目にしたときの「非言語情報」であるビジュアルが与えるインパクトも、とても大切なのです。

例えば、髪型やヒゲ、化粧といった身だしなみに気を配ることは、世代の異なる人とのコミュニケーションを円滑にする助けになります。若い人にとってオジサンの個性的なファッションが「イタイ」ように、オジサンも若い人の個性的な容姿には拒否反応が出てしまいます。第一印象の摩擦を回避するだけでも、お互いの距離をグンと近づけることができます。

「よい身だしなみや振る舞い」は、コミュニケーションの基本です。玉三郎さんがいくらコミュニケーションの達人でも、歌舞伎のメイクと衣装でいきなりわたしたちの前に登場すれば、ファンでなければちょっと引いてしまうでしょう。

また、国が違えば、外見や振る舞いやマナーの解釈も大きく変わります。お互いの言語が異なる場合は、その分だけ非言語コミュニケーションが大切になります。

マナーとしての言語は、社会で揉まれるうちにおのずと身につくものもあれば、時代とともに変わるものもあります。そうした「言語情報」は現場で学習していけばよいでしょう。一方で、「非言語情報」には感情的な要素が絡んでくるため、一度コミュニケーションに大きな齟齬を生んでしまうと、後からその印象を挽回するのには大変な時間がかかります。

よりよいコミュニケーションを築くことは大人のマナーの基本です。挨拶や敬語はもちろん基本中の基本ですが、グローバル化が進んでいる今のような時代に、相手に差をつけたいのなら、清潔感やTPOを押さえた身だしなみだけではなく、アイコンタクト、表情、握手といったグローバルスタンダードな非言語コミュニケーションのスキルを高めておくことも大切です。

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医師プロフィール

中川 雅文 耳鼻咽喉科

1986年 順天堂大学医学部卒業。医学博士
順天堂大学医学部講師、私学事業団東京臨海病院耳鼻咽喉科部長、順天堂大学医学部客員准教授、みつわ台総合病院副院長などを経て、国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 教授
著書に『「耳の不調」が脳までダメにする』(講談社)『耳トレ!-こちら難聴・耳鳴り外来です』(エクスナレッジ)ほか

中川 雅文
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