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日本初! 離島へき地プログラム「Rural Generalist Program Japan」とは?

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離島やへき地医療に一度は憧れつつも、医師としてのキャリアを積む中で、その実現を諦めた医師は多いのではないでしょうか?その要因の一つに、離島へき地医療の人材不足があげられます。その問題を解消しつつ、離島へき地医療という夢の実現をサポートするプログラムが始まります。

◆離島やへき地医療への夢 叶えられた医師は、どのくらいいるのか?

学生時代に、離島やへき地、海外や途上国での医療に憧れを持った方は多いはずです。しかし、悲しいかな、その憧れは、医師として経験を積んでいくにつれ薄れてしまうのも事実。現場の忙しさ、ご家族の問題、離島や海外に飛び込むことへの不安など、多種多様な要因が夢への障壁となっているのかもしれません。

さらに私は、離島やへき地の医師不足が、その障壁をより一層高くしているように思います。離島やへき地の医療現場には、どんな疾患が運ばれてくるかわかりません。いくら準備をしても、都市部の病院と同等の診療をすることは、まず不可能です。

しかし離島やへき地にも、困った時にいつでも聞ける専門家、いつでも応援に来てくれる仲間、すぐに駆けつけてくれるヘリコプターやジェット機、遠隔診療といったサポート体制があれば、一度は離島やへき地医療にチャレンジしてみたいと思う医師が、今より増えるはずです。また、そこである程度の経験を積んだ医師は、患者さんを守る強い心を背景に、「お前は医者か!」と言われても「俺は医者だ!」と胸を張れるはずです。離島やへき地に限らず今の日本には、そのような医師が求められている気がしてなりません。

◆「離島=片道切符」という現実

一方で、ドクターコトーのモデルで知られる、瀬戸上健二郎先生は、口癖のように「離島には片道切符で来るな」とおっしゃっていました。先生自身、最初は半年限定で行ったのですが、住民からの信頼が得られるにつれ、島を離れられなったのです。こうなってしまうと、勉強に行きたくても代診医がいなければ島を離れられません。どれほどの葛藤を抱えて島に貢献していたのでしょうか。

「離島=片道切符」の状況では、誰もすすんで「行きます」とは言えないでしょう。そんな理不尽さを払拭した教育プログラムがなくては、なり手が払底しても不思議はありません。


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◆日本版「離島へき地プログラム」スタート!

今回、その夢の実現をサポートすべく、2017年4月より「日本版離島へき地プログラム:Rural Generalist Program Japan」をスタートさせることになりました。

日本の離島へき地医療を牽引してきた指導医陣と、世界のへき地医療をリードするオーストラリアの指導医陣がタッグを組んだプログラムです。豪州へき地医療学会をはじめとし、豪州総合診療学会のへき地医療部会、豪州へき地医師会、そしてへき地医療をアカデミックに牽引するジェームスクック大学の多大なるサポートの結果、日本版プログラムのスタートに至りました。

オーストラリアは、広大な国土に多くの医療難地域を抱えています。‘Rural Generalist’とは、そんなオーストラリアで生まれた、へき地医療に資する医師の概念であり、資格です。彼らはGP(General Practitioner)として診療所で働きながら、全身麻酔をかけたり、外科手術をしたり、緊急の分娩に対応したり、ときにはフライング・ドクターとして患者搬送を行ったりと、オーストラリアのへき地で闘っています。また、総合診療医、救急医、麻酔科医、外科医、産婦人科医などさまざまなバックグラウンドを持っています。10年前に本格的な研修プログラムとしてオーストラリアで確立された‘Rural Generalist’は、いまや競争率がとても高い、ブランド化されたプログラムとなっています。

離島へき地医療に資する総合診療医を育成するには、他流試合の場が必要です。突然「明日、離島に行け」と言われた医師が赴任しても薬の種類も違い、スタッフも違い、もちろん患者層も違う島では今の職場と同じ力など発揮できるはずはありません。大切なのは力の発揮できない現実を数多く経験すること。そして、経験した挫折を乗り越えるために再度学ぶ機会と場が用意されていることです。

「Rural Generalist Program Japan」は、心置きなく他流試合に臨めるプログラムです。私は、このプログラムのスタートを皮切りに、持続可能な離島へき地医療を実現したいと考えています。このプログラムを終え「離島へき地マインド」を持った卒業生が、日本全国に100人散らばった暁には、例えドクターコトーが倒れても、誰かが応援に行ける仕組みができるでしょう。そして「俺は医者だ!」と胸を張って地域を守る医師が、後輩を育てることになるでしょう。そんな10年後を目標に、頑張ってみたいと思っています。

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医師プロフィール

齋藤 学 救急医

ゲネプロ代表,Rural Generalist Program Japanプログラムディレクター
1974年千葉県生まれ。2000年順天堂大学卒業。救急専門医、プライマリケア連合学会指導医。救急医として沖 縄県浦添総合病院で勤務した後、真の総合診療である離島医療に従事。生半可な技術では離島には通用しないと、再修業の後、2015年ゲネプロを起業。世界 トップレベルのへき地医療を展開するオーストラリアとタッグを組み、2017年4月より日本初、離島へき地プログラムスタート(研修生募集は2016年7月から)。

http://genepro.org/rgpj/

齋藤 学
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