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骨盤底筋を鍛えると、全身的に良い効果をもたらす

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40代以上の女性の約1割が経験しているといわれる「骨盤底障害」。尿漏れや骨盤臓器脱が起こる原因とその治療法とは?

女性特有の病気には、放っておいても生死に関わらないものがたくさんあります。しかし女性が長生きになった今、「年をとったからしょうがない」とあきらめていると生活の質が下がる一方です。最後まで快適に過ごすにはどうしたらよいのでしょうか?

骨盤内には子宮や膀胱、腸などの臓器が収められていて、それらを支えているのが、骨盤底を支える筋膜や靭帯、そして骨盤底筋群です。これらを一括して骨盤底と呼びますが、この骨盤底が協調して動くことで臓器を支えることができ、便や尿は普段はもれず、必要な時に出すことができるのです。

骨盤底筋は骨盤の底にあり、恥骨と尾骨の間に広がるひし形をした筋肉の集まりです。尿道や膣、肛門の3つの穴をつなぐように筋肉が集まり、この筋肉が連動して動く事で尿道・膣・肛門を操作しています。

骨盤底筋は、出産や便秘や肥満で傷つきます。そして真っ先に起こるのが頻尿や尿もれといったトラブルです。さらに年齢を重ねると筋力が低下して臓器が膣に入り込み、更には膣を経て体外に出る「骨盤臓器脱」になることもあります。40代以上の女性の11%が尿もれや骨盤臓器脱を経験しているとも言われます。

膣からは、骨盤内にある臓器がどれでも出てくる可能性があります。前から膀胱が出てくれば膀胱瘤、子宮が出てくれば子宮下垂・子宮脱、子宮と直腸の間から小腸が出てくれば小腸瘤、直腸がでてくれば直腸瘤です。さらに子宮を手術で切除したあとに、のこった膣がでてくる場合は、膣脱と呼びます。

骨盤臓器脱と尿失禁を、まとめて骨盤底障害と呼びます。いずれも骨盤底の筋肉、靭帯、筋膜の損傷で起こります。ですから治療も、骨盤底トレーニングや磁気刺激・電気刺激等で、骨盤底の筋肉を鍛え、手術で傷んだ靭帯・筋膜を補強します。当院で施行しているTFS(TISSUE FIXATION SYSTEM)手術は、傷んだ靭帯・筋膜をもっとも少ない侵襲で補強する技術で、局所麻酔による日帰り手術で、尿失禁と骨盤臓器脱を治療することができます。

骨盤底筋が傷つく、ゆるむ原因がなくても女性の骨盤底筋は日々酷使されています。骨盤底筋を鍛えると、骨盤周辺だけでなく、全身的にさまざまな良い効果をもたらします。

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医師プロフィール

関口 由紀 泌尿器科

山形大学医学部卒業後、P.P.Petros 先生に師事、インテグラル理論とTFS手術技術習得。横浜市立大学大学院医学研究科修了、日本大学グローバルビジネス研究科修士課程修了。横浜元町に女性泌尿器科、婦人科、女性内科・漢方内科の3つのクリニックを順次開業。理事長として世界標準の女性医療を目指す新しい日本の女性医療の拠点作りを行う。横浜市立大学客員教授、女性医療クリニックLUNAグループ理事長。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本透析療法学会専門医、医学博士、経営学修士

関口 由紀
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