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自分で健康を管理できる時代

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記事

体重や血圧だけでなく心拍数や睡眠まで、今はリアルタイムのデータを自分で管理できる時代になりました。スマートフォンを持っているのなら、健康管理にもどんどん活用していきましょう。

 

その昔、自らも長寿であり、「腹八分目」で有名な『養生訓』の作者、貝原益軒(かいばら えきけん)は江戸時代、自ら乗れる“天秤ばかり”を用いて自分の一番調子のよかった体重を基準に、生涯の大部分をその体重で維持し続けたそうです(奥さまも同様に測って健康管理していました)。

益軒の生きていた1600年代後半、体重測定は天秤ばかりで測るという非常に大掛かりな作業でした。しかし益軒は何度も自分と奥さまの体重を測定しました。なぜそんな大変な思いをしながらも、何度も体重測定を行ったのでしょうか? 実は、益軒夫妻は病弱な身体であり、どのようにしたら病(やまい)を予防できるのかをいつも考えていたそうです。つまり予防のため、健康管理のために体重を測定していたのです。

現代では、体重は簡単に測れるようになり、さらには体脂肪率まで測れるものも普及してきました。血圧も自宅で簡単に測れるようになり、高血圧の方は、早朝高血圧を測ることが推奨されるようになっています。

最近はさらに進歩しようとしています。この1、2年で一気にスマートフォンが普及し、現在の主戦場はスマホに立脚したヘルスケア部門となっています。グーグル、マイクロソフト、アップルなどのガリバー企業からベンチャーの小さい企業までがいろいろなデバイスやシステムを世に出しています。体重や血圧の他、歩数、活動量、心拍数や睡眠などリアルタイムのデータが自分で管理できるようになりました。

私も患者さんには体重を測りなさい、血圧を測りなさいとは言っているものの、自分のこととなると数値を記録するところでつまずき、記録したとしてもデータをうまく整理できず長続きしませんでした。また万歩計や活動量計も、衣類に付けたまま洗濯して壊したり、身に着けなかったりと、やはりうまくいきません。

しかし、それも変わろうとしています。身に着けているだけで自動的に計測・記録ができるデバイスが次々に出てきており、以前に比べてはるかに身近なものとなっています。たとえば血糖値。以前は複写式の手帳に記録するしかなかったものも、今ではスマートフォンで管理、グラフ化までできます。おそらく今はファミコンのゲームソフト黎明期のように百花繚乱、さまざまなデバイス、システムが出てきております。

スマートフォンでご自身の健康データを積極的に活用されている患者さんも徐々に増えてきたように思います。診察時にそのデータを一緒に見ながらより的確なアドバイスができるようになりました。また、自ら健康データを管理されているからこそ医師の説明もより具体的に理解しておられるようです。

スマートフォンは多くの人が持っておられると思いますが、せっかく持っているならメールや電話以外にも健康管理にどんどん使っていきましょう。私は『養生訓』の新しい時代になったと思っています。もし、益軒が現代のテクノロジーを知ったら、養生訓の第二版を書くのではないかと思います。

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医師プロフィール

篠田 和明 糖尿病内科

港南台内科クリニック 院長
新潟県出身。筑波大学第2学群在籍後、再受験で新潟大学医学部へ、卒業後、湘南鎌倉病院で臨床研修経て、横須賀共済病院、横浜市立大学附属病院、
その後、横須賀にて糖尿病は中島内科クリニック、在宅は三輪医院、認知症は汐入メンタルにて経験を積み、2014年、さまざまな先生のバックアップのおかげで横浜、港南台の地で開業する。現在は、それらの経験を生かし、糖尿病、認知症、在宅を統合しながら、これからの超高齢化社会のなかで患者さんに対応した診療、医療の構築の手伝いができたらと日々、悪戦苦闘中

篠田 和明
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