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日本の医療をケニアへ[4]日本とケニアの架け橋に

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記事

ケニアの医療と日本の医療、両方を見てきて感じたことは「日本の医療のすばらしさ」。日本の医療をケニアへ届け、ケニアの医療レベルを向上させたい――。

 

私は、幼少の頃からケニアで育ち、小、中、高とケニアの教育を受け、ケニアのナイロビ大学医学部を卒業し、とても貧しい県立病院で研修を終えました。ケニアの大抵の状況を肌で感じ、この目で見てきました。医療に関しても、良い面、悪い面、改善したいな、と思うところをたくさん見てきましたが、ケニアで生活していると今の状態が当たり前になり、それに慣れている自分がいました。

自分もそのうち専門医取得のため大学院に入るのかなと思っていましたが、ある東京大学医学部付属病院の教授との出会いで今から約3年前に日本にやってきました。最先端医療があるここ日本の東京大学病院で研修をさせていただき、日本の医師免許も取得しました。研修中には日本とケニアの医療の違いをまざまざと見せつけられていますが、どれだけケニアの医療資源が足りていないか、どれだけの救える命がケニアで失われているかを思い知らされます。

その反面、日本の医療のすばらしさ、技術や機材だけでなく、医療提供者のクオリティの良さ、サービス面や気の配り方、病院内でのさまざまな制度、チームワーク(感染対策チームやセーフティマネージメントチーム)、病院同士の連携など、日本が築き上げた医療には感心させられ、感動すら覚えました。

私はどうにかしてこの日本のすばらしい医療を少しでもケニアへ届けたいと夢見ており、日本とケニアの架け橋にでもなれたらいいなと思っております。それがケニアの医療の向上につながれば、医療レベル全体の底上げができるのではないかと……とても大変で規模が大きいように思われますが、そのために何かしたいと思っていました。

実はその時に、この「coFFee doctors」のインタビューにも登場されている林祥史先生のカンボジアへの「日本の病院丸ごと輸出」についてのお話がありました。とても興味が湧き、今までの活動内容を拝読し、「持続可能な形で途上国に医療を輸出する」仕組みには心から感心させられました。

私は、日本の病院をそのままケニアに輸入できたら良いなと思っています。ケニアの貧しい地方出身の優秀な若者たちをサポートし、Medical Officer(M.O.)から専門医への道をつくりあげたいとも思っていますし、ゆくゆくはケニアにおける「日本の病院」で、医療面だけではなく、他の面でもクオリティーの高い医師に育てあげることができたらいいなとも思っています。

日本に姉妹病院ができれば、ケニアから日本へ、日本からケニアへ、若い医師たちの交換留学の場になればいいなとも考えています。ケニアと日本の医師たちが互いに刺激しあい、国境を越えた医師・看護師のネットワークが生まれる事を期待しています。

日本の医療をケニアへ[3]「慢性化した医師」の存在

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医師プロフィール

塩尻 大輔 

小学校3年生の時に家族でケニアに移り住み、そこから21年間をケニアで過ごす。ケニアの高校を卒業後、NPOアフリカ児童教育基金の会(ACEF)プロジェクトマネージャーとして働き、オーガニック農業EM(effective Microorganisms)等を担当。同時に在ケニア日本大使館、外務省草の根基金部門でのモニター調査員も務めた。その後ナイロビ大学医学部に入学し2009年に卒業、ケニア国医師免許を取得。ケニア国キトゥイ県立病院での研修を経て、2011年東京大学医学部附属病院形成外科にて研修。2013年日本医師国家試験に合格し日本の医師免許を取得。現在は岩手県立磐井病院にて研修中。

塩尻 大輔
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