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INTERVIEW

京都大学環境安全保健機構 健康管理部門/附属健康科学センター(予防医療学)

循環器内科

石見 拓

病院外での心疾患による突然死を減らす

日本で、病院外で突然心停止となり救急搬送される方は年間12万人にのぼり、そのうち7万人は心疾患によるものです。心疾患の代表である急性冠症候群による死亡の半数以上が、病院にたどり着く前に亡くなっています。この事実を研修医2年目で知った石見拓先生は大きな衝撃を受け、以来、心肺蘇生を一般市民へ普及させるべく、研究と情報発信を行っています。どのように心肺蘇生を一般市民へ普及させようとしているのでしょうか。そして、最終目標として何を見据えているのでしょうか。

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病院外での心停止患者を救いたい

−心肺蘇生に興味を持ったきっかけを教えていただけますか?

群馬大学医学部を卒業し、どの科に入局しようかと悩んでいた頃、ちょうど東京大学医学部から循環器内科の永井良三先生が赴任されてきました。永井先生は非常に教育熱心で、その人柄に惹かれて循環器内科に入局することを決めました。

永井先生は教育のために、自らの広い人脈の中からさまざまな分野で活躍されている人を講演に呼び、多くの刺激を与えてくれていたんですね。その中に、当時、岩手医科大学循環器内科教授であった平盛勝彦先生がいました。この先生の講演が、心肺蘇生の普及をライフワークとするきっかになったのです。

平盛先生は講演で「皆、カテーテル治療の実践と技術向上に夢中になっているが、それで本当に人が救えているのか?心疾患で亡くなる人のほとんどは、病院にたどり着く前に亡くなっているということを知っているのか?」という質問を私たちに投げかけました。そして「カテーテルを使って治療している患者だけではなく、もっと病院の外にいる患者にも目を向けなさい。病院の外で心停止となっている患者を助ける心肺蘇生の普及も、循環器内科医の立派な仕事だ」とおっしゃったのです。

カテーテル治療は、「治療をしている」実感がものすごく味わえますし、研修医1,2年目は循環器内科の花形であるカテーテル治療に最も関心がある時期です。そんな時に平盛先生からこのようなことを言われて驚き、そこから心肺蘇生について調べ始めました。すると、心疾患による死亡の多くは病院の外で起こっていることが分かりました。急性心筋梗塞の病院での死亡率は数%と低いですが、心筋梗塞による死亡の半分以上は病院外で亡くなっているというデータがあったのです。このことに衝撃を受け、岩手の平盛先生の元で心肺蘇生の普及に努めたいと思いました。

そのことを永井先生に申し出ると、「心肺蘇生をやりたいならやってもいいが、ただ普及活動をやるだけではだめだ。情報発信をしっかりできるようになりなさい。そのためにはきちんと勉強をして、それからどこでやるのが心肺蘇生に関しての情報発信をするのにベストか考えなさい」と言われ、まずは群馬県で循環器医としての研さんを積みながら、患者さんの家族などに心肺蘇生の普及活動と勉強を始めていきました。

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PROFILE

石見 拓

京都大学環境安全保健機構 健康管理部門/附属健康科学センター(予防医療学)

石見 拓

京都大学環境安全保健機構 健康管理部門/附属健康科学センター 教授・部門長
日本臨床救急医学会 学校へのBLS教育導入検討委員会 委員長
NPO法人大阪ライフサポート協会 副理事長、同協会PUSHプロジェクト代表
減らせ突然死プロジェクト 事務局長
1996年群馬大学医学部卒業、循環器内科へ入局。その後、大阪に移りウツタイン様式を用いた心停止のレジストリ研究に加わる。2006年大阪大学大学院博士課程(救急医学)修了。2007年京都大学大学院Master of Clinical Researchコース修了。

 

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