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ピロリ菌の感染はどうやって調べるの?

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ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査にはどのようなものがあるのでしょうか。最も簡単に調べられる方法とは?

ピロリ菌の感染を検査する方法は、内視鏡を使う方法と内視鏡を使わない方法に大きく分けることができます。

内視鏡を使う方法では、胃の粘膜の炎症の状態、萎縮の程度、鳥肌のような小隆起の有無などを観察するとともに、胃粘膜の一部を採取して、ピロリ菌がもっている尿素を分解してアンモニアを産生するウレアーゼという酵素の反応がないかをチェックする方法(迅速ウレアーゼ法)、顕微鏡で調べる方法(鏡検法)、あるいは培養する方法で調べます(培養法)。

内視鏡を使わない方法は、尿素という薬を内服して吐く息を集め、ウレアーゼという酵素の反応を検査する方法(尿素呼気試験)、血液や尿の中のピロリ菌と戦う成分である抗体を調べる方法(血清抗体法、尿中抗体法)、便中のピロリ菌の成分を調べる方法(便中抗原法)があります。

この中で、最も簡単に調べられる方法は、尿中抗体法です。通常の尿検査と同様に尿を取って提出していただければ、ピロリ菌に対する抗体がないかどうかを調べることができます。内視鏡検査を受けることもなく、採血もありませんし、便をとる必要もありません。

尿中抗体法の感度は96.2~96.8%といわれています。20人検査をするとそのうちの1人くらいが本当はピロリ菌の感染があるのに感染がないと診断されてしまう(偽陰性)可能性があります。心配な方は、尿中抗体検査に、尿素呼気試験、便中抗原検査を組み合わせて行うと精度が上がります。

  • 尿中抗体が陰性だったら

尿中抗体検査が陰性でピロリ菌感染がないと言われても、念のため35歳あるいは40歳になったら胃がん検診を受けてください。検査の正確さには限界がありますので、感染があっても尿中抗体が陰性となってしまうことがあります。

  • 尿中抗体が陽性だったら

検査結果を持って、胃内視鏡検査を行っている近くの病院かクリニックの消化器内科、胃腸科を受診してください。ピロリ菌感染があった場合に最も大事なことは、胃がんができていないかどうかをチェックすることです。そのためには、胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けてください。胃内視鏡検査では、胃がんができていないか、胃潰瘍・十二指腸潰瘍がないか、胃粘膜の炎症の程度を観察します。また必要に応じて組織を採取して調べます(生検)。

胃内視鏡検査のあと、現在のピロリ菌感染の有無を、迅速ウレアーゼ法、鏡検法、培養法、尿素呼気試験、便中抗原検査などでチェックします。血液や尿で調べる抗体検査は、過去の感染を調べる方法です。過去に感染があり、除菌治療を受けていなければ、現在も引き続き感染があることが多いわけですが、中には風邪などの症状で抗生剤を飲んだときや粘膜の炎症による萎縮が進行して胃粘膜が荒廃しピロリ菌も住めなくなったときに、ピロリ菌がいなくなってしまうことがあります。

胃内視鏡検査とピロリ菌の感染を確かめる検査は、健康保険の適応となっていますので健康保険診療(若いかたは3割の自己負担)で受けることができます。

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医師プロフィール

村井 隆三 消化器外科

医療法人社団おなか会おなかクリニック理事長・院長
NPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会代表理事

1982年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学にて外科研修医。1984年同大学附属第三病院外科入局。同大学附属病院外科講師、東急病院外科 外科系診療部長、町田市民病院外科 消化器担当部長。同大学助教授、東京医科歯科大学大学院医療経済学非常勤講師、夕張希望の杜理事などを歴任。2005年京王八王子駅前に村井おなかクリニックを開業。医療法人化を経て、2011年JR八王子駅前に移転し、おなかクリニックと改称。年間8000件以上の胃・大腸内視鏡検査と年間およそ400件のソケイヘルニア・痔の日帰り手術に特化した専門クリニックである。

村井 隆三
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