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情報に惑わされる若い世代

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記事

研修医修了後から約30年間、さまざまな途上国で国際保健活動をされていた仲佐 保先生。現在は国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部長として、主にJICAなどの国際保健医療協力事業への医師や看護師の派遣サポートをされています。一方で、学生団体jaih-sやNPO法人GLOWを通して国際保健に興味のある医学生、若手医療者との交流もあります。若い世代と多く接しているベテラン医師・仲佐先生から、今の若い世代に感じる課題を伺いました。

-今、若い世代に感じている課題は何ですか?

若い世代の人たちが将来何をやりたいかを考える時、情報に惑わされて、なかなか行動できていないことです。

―そうなっている背景は何でしょうか。

一つは現代に雑多な情報がありすぎるという事だと考えます。

私が学生だった頃は、携帯電話もインターネットもなく、情報が非常に限られていました。そのため、自分が入手できる情報の範囲が今よりかなり限定されている中で「自分は何がやりたいか」を決めていました。

しかし現代は、ありすぎるくらい大量な情報が私たちを取りまいています。さらに、それらの情報が本当に正しいかどうかの判断がとても難しいです。国際保健に関連したところですと、WHOやUNICEFなどの国連保健機関の情報であっても、絶対的に正しいわけではなく、その情報がどのように入手されたのかを見る必要があります。 

-若い世代はどのようにして将来を考えていけばよいのでしょうか?

まず、自分の中のやりたいことを見極めることが重要です。情報をどのように選ぶかというスキルにこだわっていてはいけません。外に情報を求めるのではなく、「自分がなにをやりたいのか」ということを、自分と向き合うことで見つけるのです。なにかしらやりたいことはあると思うんですよ。それを見極めるのです。

私が国際保健のプロジェクトを考える時、海外でどんな問題があるか情報を集めてからやることを決める、というプロセスはとりません。なぜなら、全てが問題だらけな場合が多いので、情報を集め始めるときりがないからです。そのため、「これやろう」とやることを先に決めてからその周辺情報を集め始めます。

これと同じように、まず自分が何をやりたいかを決めてから、動き出すのです。そして、やりたいことが見つかったら、確実性があるかないかで判断するのではなく、まずやってみればよいと思います。自分がやりたいと思ったことをやればいいのです。

海外でプロジェクトを始めるのと同じように、とりあえず国際保健の現場を経験してみて、2,3年経っても上手くいかないようだったら、他の道を考えればいいのです。何事も一生やろうとは思わないことです。10年を一括りに考えて、やっていく。10年たったところでそれが面白ければ引き続きやっていけばいいですし、ある程度満足いったのであればまた別の道に進めばいい。そのくらいの心構えで物事に取り組んだらいいのではと思います。

「考えずに踏み出しなさい」この一言に尽きます。考えるなと言っても、みんな考えているんですよ。ただ、一歩足を出せばいいだけなのです。人間、一歩足を出せばあとは歩けるのだから。

(聞き手 / 北森 悦)

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医師プロフィール

仲佐 保 外科

1980年広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター国際医療協力局運営企画部長を務める。
1981,82,83年カンボジア難民医療従事、1985年にはエチオピア飢餓被災民援助、1987-90年はJICAボリビア病院協力長期専門家としてボリビアに渡る。また、1996-99年にはJICAパキスタン母子保健プロジェクトチーフアドバイザー、2000-2004年はJICAホンジュラスリプロダクティブヘルスプロジェクトチーフアドバイザーと、長年にわたり国際医療保健に携わる。2004年から国立国際医療センター国際医療協力局派遣協力第2課長に就任し、2010年から現職。

仲佐 保
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