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社会医療家として、横手をより良い町にしていきたい

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記事

地元・秋田県横手市で診療の傍ら、まちづくりのために、地域の公共団体や学校、企業と連携し、さまざまな活動を行ってきた細谷拓真先生。どのような想いを持ち、どんな世界を創るために活動しているのか伺いました。

◆社会医療家としてまちづくりに力を入れる

―現在は、どんなことに取り組んでいるのでしょうか?

秋田県横手市にある医療法人賢友会 細谷内科医院にて副院長を務める傍ら、不動産事業や飲食・ホテル事業にも携わっています。同時に、横手市の地域活性や若者の教育支援など、社会医療家としての活動も行っています。

社会医療家としての活動を詳しく教えてください。

2009年に発足し、代表理事を務めるNPO法人Yokotterでは、『横手でこどもを育てたい』といわれるような町にするべく、SNS での情報発信や様々なイベントを実施し、市民の人たちだけでなく、全国の人たちとの交流を推進してきました。初期には、横手のソウルフードを改良した「よこまき。」を企画・販売し、新たなB級ご当地グルメとして話題を呼び、食によるまちおこしなども実現しました。

また2012年に立ち上げた MIRAI YOKOTE」では、リアルとオンラインで若者が多様な社会人とつながり、語り合いながら、「なりたい自分」をみつける機会も提供してきました。

教育支援としては秋田県立横手清陵学院高校の2年生向けの授業を担当。ここでは講義だけでなく、地元の商店を巻き込んだ祭り(赤門祭)を企画し、若者が地域の人々との世代を超えた交流を通じて、横手の魅力を知る機会などをつくっています。

どんな想いやスタンスで、まちづくりに取り組んでいるのでしょうか?

どうすれば市民1人ひとりが、自分らしく、幸せに生きられるのか。そのことを考えて、まちづくりに取り組んでいます。

そのきっかけとなったのは、あるスタッフに「普通の女の子が普通に幸せになったらダメなんですか?」と尋ねられたことでした。

100人いたら100人全員、性格も価値観も違います。「普通」というのはありえず、誰でも幸せになれる、というのが私の考えです。以前であれば、自分と合わない人が同じコミュニティにいると、生きづらさを感じて過ごしていたかもしれませんが、これからは、自分と合わない人の個性も認め、同じ地域で生活していく、多様性を受け容れる社会であることが大事になってきます。

例えば、町を盛り上げるために活動をしている若者に対して「あれはダメだ」「もっとこうするべきだ」と批判ばかりしているとせっかく勇気をもって立ち上がってくれたのにいなくなってしまうということも起きてしまうのです。それは残念でなりません。

人の活動を評価するのではなく、応援や後押しをしたり、その人の可能性をもっと広げられるような関わり方をすることで、みんなが生きやすい世界がつくれると思います。私自身も若い人たちには、その人の活動に意味づけや方向づけができるようなアドバイスをするようにしています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、「まちづくり」にも変化がありましたか?

そうですね、新型コロナウイルスの影響により、イベントありきのまちづくりやまちおこしで町に人を呼び込むことが、必ずしもゴールではなくなってきたと思います。まずは「安心・安全」に参加できること。それがないと、何も始まりません。そしてこれからは、年齢に関係なく「なりたい自分」がイメージできて、自分の未来を安心して迎えられるようなコミュニティづくりが必要になるでしょう。

そのためにも、まちづくりなどを支える事業も、理念があるのはもちろん、経済的に継続できるビジネスでなくてはいけません。持続的に成長していく魅力のある事業も織り交ぜながら育てていかないと、若者も一緒に何かしてみたいと思ってくれないでしょう。

◆横手の町をもっと活性化させるために

―ところで、なぜ横手市のまちづくりに取り組まれたのでしょうか?

あれは、忘れもしません。2009年に帰省した際、市内で最も人が集まるはずの横手駅前が閑散としている状況を目の当たりにして、「このままでは横手市は滅びるかもしれない」と危機感を抱きました。ちょうどその年に子どもが生まれたこともあり、自分を育ててくれた地元を「このまちで子どもを育てたい」と言われる場所にしたい、という気持ちが膨み、仲間と一緒に行動を起こしました。

私が31歳の時、週に1回、市民の人たち向けにワークショップを行ったことがありました。当時、高校1年生ぐらいの若者から自治体の職員、横手市への移住者、60歳ぐらいの経営者に至るまで、毎回10数名ほどが参加しました。

このワークショップでは、誰かががみんなに何かを教えるのではなく、経営者が高校生にプレゼン内容についてのアドバイスをしたり、反対に高校生が社会人たちに若者事情について話をしたりと、教わる人や教える人のどちらにとっても学びになる場になっていました。まるで屋根瓦のように各年代の人たちがつながって学んだ1年でした。

最近、そのワークショップの成果を感じた出来事がありました。当時、高校生だった若者が社会人になり、今は東京に住んでいるのですが、Zoomでまちづくりや横手の未来について話をしていたときに、「にぎわいとは何か」という話が持ち上がったんです。すると、彼は「世代の異なる人たちが交わり、自由に話し合っているような状態じゃないですか」と言ったんです。

今までは私自身、「にぎわい」について、そんなふうに考えたことがありませんでした。しかし世代の異なる人たちが集まり、屋根瓦のように積み重って学び合う経験をした彼だからこそ、気づいたのだと思います。このように関わる人々の成長から、まちおこしの手応えを実感し、それが私のやりがいになっています。

―横手市のまちづくりに取り組み始めてから「都市経営」を学ばれたそうですね。それはどういった経緯からでしょうか?

持続可能なまちづくり・まちおこしを推進していくためには、ファイナンスを学ばなくてはならないと感じ、利益を生む「公民連携」や「都市を経営する」ということを学ぶために「都市経営プロフェッショナルスクール」というプログラムに参加しました。

そのかいあって、1人の幸せを考えながらも、資本をどのように積み上げて事業を円滑に回していくかというビジネス的な側面も考えられるようになってきました。

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医師プロフィール

細谷 拓真 腎臓内科

医療法人賢友会 細谷内科医院 副院長
秋田県横手市出身。2002年3月東北大学医学部卒業。同年4月より岩手県立中央病院にて初期研修修了、同院腎臓内科で後期研修修了。その後仙台社会保険病院腎センター、東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科で研鑽を積む。2011年4月より医療法人賢友会 細谷内科医院 副院長に就任。

細谷 拓真
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