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INTERVIEW

東京大学医科学研究所 特任教授

医療ガバナンス

上 昌広

医療現場から世間に問いかける!

医療問題が起こると必ずどのメディアにも出てくる、上 昌広(かみ まさひろ)先生。
彼は何者なのでしょうか?
「医療」と言えど、患者さんを診たり、手術をしたりするだけではない医療があります。まさに上先生こそが医師や医療現場の問題点を見つけて改善に向けて動くなど、世に求められる医療のあり方を考える役割を担う立場にあります。
今回は、世の中にある様々な医療問題に切り込み、更にご自身を「吉本興業でシアターの支配人もやっているのと同じ」とおっしゃる医療ガバナンスの専門家、上先生のお話をお聞きしました。

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医療現場が少しでもよくなるために、何ができるか

先生のお仕事は「医療ガバナンス」だそうですが、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?

簡単に言うと、医療現場で起きている問題を見つけ、メディアに発表して問題があることを世の中に広く知ってもらったり、その改善方法を考えたりする仕事です。大学機関ですので、科学的に分析を行い、そのデータをまとめて論文やメディアに発表しています。

「医療ガバナンスに「メディア」の果たす役割とこれからの医療」(Huffingtonpost)
“医療におけるガバナンスで重要なのは「合意形成」だと考える。「関係者の合意形成」に影響するのは、「熟議」と「メディア」である。これが「国民の合意形成」となると「メディア」の果たす役割が大きくなる。”
http://www.huffingtonpost.jp/masahiro-kami/medical_b_5061058.html

「医療ガバナンス学会」(上先生主催のメディア)
http://medg.jp/mt/

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例えば最近の問題としてはどのようなものがありますか

最近の大きな問題として「看護師の人数のアンバランス」があります。医師不足はよく言われていますが、実は看護師不足のほうが深刻で、しかも地域によっては看護師が比較的多いところもあるのです。

「えっ?」と思われるかもしれませんね。医師が全国的に足りないイメージを持っている人は多いと思いますが、看護師は人数が足りないところ、余っているところのバランスが非常に悪いのです。

看護師は「地産地消」と言われています。つまりは、その土地で学んだ看護師は、その土地の病院に就職するのが一般的で、地域を大きく離れて就職する人はほとんどいません。その結果どうなるかというと、人口当たりの病院が多い地域には看護師がたくさんいて、逆に人口当たりの病院数が少ない地域では、看護師が不足する事態になっているのです。

例えば、東京は人口が多い分病院数も多いですが、その多さに比べると病院や医療従事者の数はごくわずかです。現に人口10万人当たりの看護師の割合はなんと全国で下から4番目です。一番少ないのは埼玉で、神奈川・千葉と続きます。関東の看護師不足は実に深刻なのです。

一方、人口における看護師の割合が多いのが、高知をはじめとする四国地方と鹿児島など九州地方です。これらの地域では、関東ほど人口が多くないのもありますが、それ以外に、看護師に限らず人材を輩出する教育機関がしっかりしているからだと考えられています。

一見この看護師数のアンバランスがどんな影響を及ぼすかは分かりにくいことです。しかしながら、アメリカでは、168の病院、2万人以上の患者を調査した結果、「病院に看護師が多いと外科患者の死亡率が下がった」という結論を発表した論文も発表されています。すなわち、看護師の数は命が助かるかどうかを左右する、非常に重要なことなのです。

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PROFILE

上 昌広

東京大学医科学研究所 特任教授

上 昌広

1993年東京大学医学部卒、東京大学医学部付属病院にて内科研修医となり、1995年、東京都立駒込病院血液内科医員に。1999年、東京大学大学院医学系研究科博士課程を修了し、虎の門病院血液科医員に。2001年から国立がんセンター中央病院薬物療法部の医員も務め、造血器悪性腫瘍の臨床研究を行う。2005年、東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンス、メディカルネットワークを研究。専門は血液・腫瘍内科学、真菌感染症学。著書に『医療詐欺』(講談社)がある。

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