coFFee doctors – 記事記事

チーフレジデントを名誉職に引き上げる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 1
  • 2

記事

医師8年目の小杉俊介先生は、後期研修中にチーフレジデントの重要性を実感。チーフレジデントを名誉職に引き上げるべく、チーフレジデント協会(JACRA)を設立しました。その背景には研修制度全体を俯瞰して感じた、ある想いがありました。

◆チーフレジデントを名誉職に引き上げたい

―チーフレジデント協会(JACRA)代表の一人である小杉先生。このような組織が必要だと思った理由は、どのような点にあるのでしょうか?

飯塚病院総合診療科の後期研修医になって経験したことや感じたことから、JACRAの必要性を感じました。まず、私が後期研修を受けた飯塚病院総合診療科にはチーフレジデントがいます。先輩方の姿を見ていて、チーフレジデントがいることの必要性を感じましたし、チーフレジデントがリーダーシップを取れることで組織がうまく機能することを漠然と感じていました。

そして、自分がチーフレジデントになった時、人をまとめることの難しさを身をもって体感。同時に、チーフレジデントがミドルマネジャーのような存在で、組織全体の中ではチーフレジデントが鞴(ふいご)の役割を担うことで組織全体の動きが大きく変わることを実感したのです。

同時にこの頃、先輩方がグロービス経営大学院に通い始めたのを見て、私も1科目ごとに受講できる単科生として出席するようになりました。すると、一般企業に勤めているミドルマネジャークラスの人たちが大勢参加していて、皆同じような立場で同じようなことに悩んでいて――大企業がコストをかけてミドルマネジャークラスの社員にマネジメントを学ばせているということは、マネジメントを学んだ人材が組織にいることが、大きなインパクトをもたらすと知ったのです。

さらに飯塚病院が提携しているピッツバーグ・メディカルセンターに短期研修に行った時のこと。当科のチーフレジデントの権限は、科内の環境整備や質の向上に限定されていて、病院全体のことはスタッフを通さなければいけなかったのですが、現地のチーフレジデントはローテーションや休暇のスケジュールを組んだり、バーンアウトしそうな人がいればフォローに入ったり――その裁量の大きさに驚きました。

加えて、アメリカとカナダのAssociation of Program Directors in Internal Medicine(APDIM)という内科プログラムディレクターのための組織のミーティングに機会があって参加したところ、チーフレジデントの権限範囲や意義が熱弁されていたのです。

こういったことが重なり、組織を大きく動かす可能性をもっているチーフレジデントを、アメリカやカナダのような名誉職にまで引き上げることが必要なのではないかと思ったのです。

というのも、かつて習い、一番印象に残っている言葉あります。それは「組織を変えるのは、頭をすり替えるか、自分たちと同じような共通認識を持った下の人たちが頭になるしかない」という言葉。

現在の研修制度など、今の医療の中で物事を変えるためのいい手段はないかと、頭の片隅でずっと考えていました。今までなかったものを作ることで、同世代や後輩たちの間に、1つの新しい共通認識を作り出すことができれば、一気に変えられるのではないか――そう考えて、チーフレジデント協会を立ち上げました。

  • 1
  • 2

医師プロフィール

小杉 俊介 総合内科

福岡県出身。2012年3月熊本大学医学部を卒業後、北九州総合病院にて初期研修修了。2014年4月より飯塚病院総合診療科にて後期研修修了、現在も同病院総合診療科に勤務。 2019年よりチーフレジデント協会(JACRA)代表を務める。2020年2月19日に「第2回チーフレジデントミーティング in Japan」を開催予定。申込みはこちら:https://jacrameeting2nd.peatix.com/

小杉 俊介
↑