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病院総合医の価値を発信し、若手へ道標をつくりたい

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医師9年目の長野広之先生は、病院総合医として勤務する傍ら、日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部門の病院総合医チームリーダーを務めています。病院総合医として活躍する中で感じた課題は「キャリアパスの不明確さ」でした。これ以上キャリアパスで悩む若手医師を増やしたくない、そんな長野先生が考える試みとは――。

◆病院総合医のキャリアパス明確化

―2017年に天理よろづ相談所病院から洛和会丸太町病院に移り、現在取り組まれていることは何ですか?

臨床業務と並行して、医師3年目から5年目までの後期研修医の教育を中心に取り組んでいます。当院の後期研修医は1学年3~5人いて、医学的なことだけでなく、患者さんとどう接していくか、家族とどう接していくかなど、家庭医療的なスキルを指導する機会も多いです。天理よろづ相談所病院では初期研修医を相手に指導していましたが、現在は後期研修医が相手なので、彼らが納得するように、指導も1段階レベルを上げるように意識していますね。

同時に、日本プライマリ・ケア連合学会の若手医師部門病院総合医チームリーダーもされています。こちらでは、どのような試みをされているのですか?

当学会の若手医師部門病院総合医チームのMission&Visionは「病院総合医(病院の総合診療)の価値を社会に発信し、これを志す若手の道標になる」としています。全国の若手病院総合医が集まり学会内外で活動することで病院総合医の認知度を広げ、若手にキャリアパスを示そうとしています。

病院の中で総合診療をされている先生方はたくさんいらっしゃいますが、今まで病院総合医として活躍されてきた先生方は、自分で実績を積みキャリアを切り開いてきた方が多く、「病院総合医」という1つのキャリアパスは、まだしっかりと確立されていません。そのため、興味を持っている若手医師は多いと思いますが、どのようなキャリアを積むことになるのか、どのようなことを学び、どう成長していけばいいのかが不明確なので、「病院総合医」へ飛び込むことへの不安は大きいと思います。

ですから、我々は10年目ぐらいまでの医師が集まり病院総合医の価値を社会へ発信していくことで、病院総合医を志す若手の道標を作っていきたいと思っています。そして結果的に病院総合医が活躍する病院が増えれば自然とキャリアパスが示されていくのではと思います。また現在、病院総合診療医育成コンソーシアム主導で病院総合診療医のサブスペシャリティが作られようとしています。今後は一層病院総合医への注目が高まるのではと思っています。

―院内での病院総合医の役割について、長野先生はどのように考えていますか?

病院総合医は、それぞれの病院に今1番求められていることを見極めて、自分のスキルを提供していきます。そのため、病院ごとに役割が大きく異なります。例えば、天理よろづ相談所病院では、奈良県内に膠原病や腎臓疾患分野を診られる医療機関が少なかったことから、昔から総合内科がそれらも診てきました。また、丸太町病院では専門医の先生が大病院に比べて少ないながらも、幅広い疾患群をカバーし救急車を積極的に受け入れ救急の初期対応を行う一方で、グループホームへの訪問診療も行い、病院の採算にも貢献しています。

病院内に無い機能を補い、まるでアメーバのように自分を柔軟に変化させ、求められるところを埋めていく。これが病院総合医でありやりがいであると考えています。

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医師プロフィール

長野 広之 病院総合医

大阪府出身。2011年に大阪大学医学部医学科卒業後、2012年より奈良県にある天理よろづ相談所病院で初期研修、同病院内科ローテイトコースで後期研修を修了。2015年度チーフレジデント。その後、総合内科医員として勤務。2017年より洛和会丸太町病院救急・総合診療科医員として勤務する傍ら、日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部門病院総合医チームリーダーを務める。

長野 広之
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