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手軽なカウンセリングアプリでうつ病治療を変える

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​自分らしく生きる手助けをする――そう語るのは、精神科医でありながらメンタルコンパス株式会社で代表を務める伊井俊貴先生です。カウンセリングで多くの患者さんと向き合う中で感じたのは、重症化した患者さんが、再び社会へ復帰することの難しさです。患者さんだけでなく、精神科医をも救う新しいサービスとは――。

◆重症化してからでは、本当に救うことにはならない

自社サービスであるメンタルコンパスについて教えてください。

メンタルコンパスは、LINEや動画を用いて手軽にメンタルトレーニングができるアプリ(アプリケーション)です。このアプリの目的は、自分を知ることと感情のトレーニング方法を学び、うつ病などの精神疾患にならないようにすることです。さらに、このトレーニングを行うことで自分らしく生きられる手助けになれたらと思っています。

具体的にはどのような内容なのですか?

具体的にはLINEを用いて、カウンセリングの動画を見てもらい、クイズ形式で理解度を確認していきます。カウンセリングの内容は、患者さんによってパターンが多少異なるだけで、大筋の内容は同じ場合が多いです。そのため、これまで私が行ってきたカウンセリングをパターン別に収録し、配信します。そうすることで診察室で行うカウンセリングと同等のことが、いつでもどこでも受けられます。

アプリを開発しようと思ったのはなぜですか?

数年間で150人近くの患者さんをカウンセリングする中で、1度精神科系の病気を患うと再び社会に復帰することは極めて難しいことが分かりました。

うつ病になった場合、重症化して会社を辞め、そこで初めて病院へカウンセリングを受けに来ることが多いです。そうすると症状が良くなった後、また1から仕事を探さなければならない。これは患者さんにとって、肉体的にも精神的にも非常に辛いことです。来院する前に治療ができるシステムがあれば、さらに精神疾患を発症する前にカウンセリングを受けて予防できれば、患者さんの負担を少しでも軽くできるのでは、と考えたのです。

また、カウンセリングを受けること自体もお金と時間がかかってしまい、患者さんの負担は大きいです。ましてや発症前にカウンセリングを受けることはハードルが高いため、手軽にカウンセリングが受けられるようにアプリの開発を思いつきました。

なぜ起業に踏み込んだのでしょうか?

当初は、自分のクリニックを開業しようと思っており、そこでアプリを使って治療ができる体制にする予定でした。けれど、ヘルスケア関係の起業家の方が多数参加するピッチイベントに行った時、起業家のほとんどがヘルスケアの専門家ではない人たちだったのです。そして、そのほとんどがアイデアしか持っていない状態でした。

一方、自分ならアイデアに加えて精神科医として培ってきたノウハウもあるので、それを具現化すればビジネス化が可能ですし、現時点ではまだ「医師が」事業化することでより高い価値を生み出せると思ったのです。そこでいったんはクリニックを開業することは後にして、起業することにしました。ただ、商売はやはり難しいことを今身をもって感じています。

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医師プロフィール

伊井 俊貴 精神科

富山県出身。2008年に富⼭⼤学医学部医学卒業後、名古屋市立大学病院にて研修。日本若手精神科医師の会で理事長を、ACT Japanで理事を務める。2018年にはメンタルコンパス株式会社を立ち上げ、メンタルトレーニングアプリ「メンタルコンパス」を開発、2019年にはAichi Open innovation Acceleratorに参加している。

伊井 俊貴
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