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私が「千葉市を日本のシアトルに!」を始めた理由[1]

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記事

多くの大都市の救急救命率は10%以下であるにもかかわらず、シアトルの救命率は約40%だという。千葉市の救命率を上げ、日本のシアトルにするために――。

 

「千葉市が、日本一の救命都市になる」

「千葉市に住めば、長生きできる」

「千葉市が日本一住みたい街になる」

「千葉市のブランド力が高まる」

という構想、「千葉市が日本のシアトルに!」が2010年からの私の夢です。この5年間でシアトル化計画に共鳴する人がずいぶん集まってきました。皆で連携して本気になれば、10年以内には達成可能な夢だと思っています。

ところで、なぜこの夢に向かって走り始めたのかをお話しします。

私は日本経済の失われた30年、1000兆円におよぶ赤字国債、少子高齢化など元気のない日本を何とかできないのだろうかと常々思っていました。

われわれ日本人は、いつも中央からの通達や予算分配を待って行動しているように思います。ところが、アメリカやドイツ、中国など世界で元気な国は連邦制国家です。それぞれの連邦が、国の考えとは独立して活動しています。これから学ぶべき事として、この答えのない世界で元気にやっていくためには、地域それぞれの独自の創意工夫がもっと必要だと思いました。そして、何か自分でもできるような草の根活動はないだろうかと考えていました。

ちょうどその時、千葉大救急部の織田教授の御講演の中で、ほとんどの大都市の救急救命率は10%以下だが、アメリカ・シアトル市の救命率は40%前後という驚異的な高さであることを聞き、千葉市の救命率をもっと向上できないかと思ったのです。一番強い動機になったのは、「心停止の場所が、運命の分かれ道で良いのか」という思いでした。シアトルで助かる人が、千葉市では助からないとしたら、それは非常に残念な事です。

シアトルではバイスタンダーCPR(そばに居合わせた人による救急蘇生)が、人間としてやるべき当然のことという文化があり、BLS(Basic Life Support:一次救命処置)と救命の鎖の重要性を皆が知っています。心停止から10分たつと、ほとんどの人の命は助かりません。救急車の到着平均時間は約8分です。バイスタンダー(そばに居合わせた人)が何もしなければ、助かるべき命も助かりません。

救急車が到着する前に、市民が自分で救命処置を行うほうが救命率が高くなることをシアトルの市民は知っています。倒れている人に「どうしました?」と声をかけ、反応がなければ「誰か来て下さい」と声をかけ、人を助けようという意識の高さが救命率の高い理由です。

救命の連鎖のスタートは、心停止を起こした人のすぐそばにいる人が、1分でも早く救急措置を始めることです。救急病院に何億というお金をかけてすばらしい建物を作っても、それは救命の連鎖の最後の鎖なのです。最初の5分が、一番大切なのです。

救命の連鎖のスタートには、お金はかかりません。必要なのは、勇気と心です。日本人にも人を助けようという意識の高さは、十分にあると思います。しかし、倒れている人に「どうしました?」と声をかける勇気はありますか。迷わず「誰か来て下さい」と、声かけできますか。すぐに、救命活動を出来ますか。もう一歩の勇気が無いのです。

◆シアトル化計画の実際

救急救命率を高めるためには色々な組織の連携が必要です。そこで、医師会の中にCEMTEC委員会(Chiba Emergency Medical Training and Education にCommittee)を作りました。この委員会は、千葉市をシアトルにするための横断的な委員会です。これには、千葉大学の救急部・循環器科・呼吸器科教授や市内病院の救急部長、千葉市教育委員会・消防局、医師会の各委員会委員長が参加しております。

私が「千葉市を日本のシアトルに!」を始めた理由[2]

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医師プロフィール

中村 眞人 内科

1979年千葉大学卒業、第三内科入局。1986年千葉社会保険病院循環器部長・運動療法部長を経て、1995年なかむら医院を開設。1996年より千葉県&千葉市健康スポーツ医学研究委員会委員・生活習慣病啓発NPO小象の会監事・ちばアートとスポーツの会の理事となり、健康スポーツの普及に努める。2008年より千葉市医師会理事。2010年より「千葉市を日本のシアトルに!」する活動を千葉市教育委員会・消防局・千葉大学・歯科医師会・薬剤師会・救急救命士学校と連携して推進中。

中村 眞人
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