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ピロリ菌除菌による胃がんの予防

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記事

ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を受けると胃がんになるリスクを減らすことができます。ピロリ菌保菌者の除菌治療によって胃がん撲滅への道が開けるかもしれません。

ピロリ菌検査を受けて陽性と判明したら、まず内視鏡検査を受けて、胃粘膜の状態を調べ、現在胃がんができていないかどうかを検査します。そしてその後ぜひ除菌治療を受けてください。除菌治療は1週間抗生物質などを服用するだけです。除菌が成功すると胃粘膜の炎症が改善し、将来胃がんになるリスクが減少します。つまり胃がんを予防することができるのです。

残念ながら全ての方の胃がんが予防できるわけではありません。もはや胃粘膜の萎縮がすすんだ高齢の方は除菌をしても胃がんになる率はあまり変わらないかもしれません。しかしまだ萎縮のすすんでいない若いうちに除菌治療を受けると、将来の胃がんの発生を減らすことができます。できれば50歳までに、少なくとも60歳までに除菌するようにしてください。

除菌すると胃がんになる率は減るのですが、完全にがんにならなくなるわけではありません。除菌が成功した場合でも、治療前の胃粘膜の萎縮の程度に応じて1~3年に1回は内視鏡検査を受けるようにしてください。そうすることによって、万が一胃がんが発生したとしても、治る状態で発見することができます。

今はまだがんになる世代(65歳以上)のピロリ菌感染率が高いので、胃がんの発生率も高いのですが、30代、40代の人の感染率は20%くらいです。この世代が65歳以上になる頃には確実に胃がんは減っていきます。さらにその下の世代が高齢になる頃には胃がんは非常にまれながんになっていることでしょう。

このように何もしなくても将来胃がんは減少していくのですが、現在ピロリ菌に感染している方の胃がんになる危険度は変わりません。10歳代の若い世代では感染率は少ないとはいえ、まだ4~5%は陽性と思われます。この方たちを見つけて、除菌することが望まれます。

そこで若い世代のピロリ菌検診も地域によっては導入が始まっています。例えば高校の一般尿検診の時に一緒に尿中ピロリ菌抗体を測定し陽性者をピックアップする。この年齢で胃がんになっている可能性は限りなく0に近いので、内視鏡検査をしないですぐに除菌治療で良いと思います。この場合の除菌治療は保険診療が効かないので、自治体レベルの公費で負担するようにすれば、より多くの方が治療を受けることができるでしょう。こういった取り組みを国全体に広げ、若い世代のピロリ菌保菌者を治療することによって、胃がん撲滅への道が開けると信じています。

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医師プロフィール

菅 誠(すが まこと) 消化器内科

1985年 横浜市立大学医学部卒業
1985~1994年 研修後、横浜市立大学医学部第二内科に入局
大学付属病院・関連病院に勤務
1994~2002年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院消化器内科勤務
内視鏡室所属となり、消化器内視鏡の診断・治療、ピロリ菌の研究に携わる
2002年 藤沢市湘南台に「すが内科クリニック」開業 現在に至る
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医

菅 誠(すが まこと)
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