日本の体外受精事情
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なかなか子どもができない場合は体外受精しかないのでしょうか。
当院に来られる方は30代の方が多いですが、タイミングを見ていく等で体外受精までいかずに妊娠される方が多いですよ。高齢の方などは体外受精でないと厳しいこともありますが……。
体外受精を行うとなると、料金はどれくらいかかるのでしょうか?
体外受精自体はだいたい40万円前後ですね。ただ、それとは別に毎回の注射代や薬代などもかかりますので一概には言えないです。病院によって大分値段は違ってきます。
実際に体外受精を行った時の成功率はどのくらいですか?
日本での成功率は、今は3割くらいです。世界的に見て日本は体外受精を行う数は多いのですが、成功率の数値だけでいうと、日本は下から数番目くらいと低めです。アメリカだと2番目とかで、成功率は日本より断然高いですね。
なぜ日本は成功率が低いのでしょうか。
それは、アメリカの方が技術が高いからというわけではなく、倫理的な問題なのです。日本ではドナーや代理母といったものが制限されていますが、アメリカではそのような背景が全然違います。40代で卵子だけ他から提供を受けて受精したものを戻して妊娠するという例で言うと、お母さんの年齢はほとんど関係なくて、卵子の年齢で妊娠率がかなり決まってくるのです。結局アメリカは卵子ドナーが多くて、卵の質が生きがいい若い人のものを使うので、妊娠率が純粋にあがります。でも、日本は晩婚化して、体外受精で子どもが欲しい人の平均年齢がクリニックによってはほぼ40近くなんですよね。一昔前だったら、うちでは診れませんという位の年齢です。日本ではドナーではなく40代の卵子を使って体外受精をするので、どうしても妊娠率が下がってしまいます。
このように数値だけで見ると日本の妊娠率が低く感じてしまいます。体外受精のニーズはあがっているのですが、受ける方の年齢が上がっていっているので、成功率も同時に下がってしまっているというのが現状なのです。
医師プロフィール
椎名 邦彦 産婦人科
聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学東横病院にて産婦人科医として勤務し、カナダでの不妊治療の研究生活を経て産婦人科医局長となる。愛育病院など産科医療に20年以上携わるほか、不妊症治療専門クリニックにて最新医療に携わる。また、米国セネジェニックス研究所、東京女子医科大学青山女性医療研究所など、国内外での美容&アンチエイジング医療の研鑽を重ね、メディアージュクリニック青山の院長として、最新医療をとりいれた婦人科と美容医療を実践。2015年3月武蔵小杉にこすぎレディースクリニックを開業。最新の産婦人科・美容医療に加えて、東洋医学などの代替医療やアンチエイジング医療を取り入れながら、女性のあらゆる悩みに対応できる医療、対症療法だけに頼らない統合的な医療、安心して継続できる医療を目指している。