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糖尿病は悪の権化!

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記事

「糖尿病は体に良くないから……。」「おしっこに糖が出るから……。」そうは言っても、特につらいことがあるわけでもないのに糖尿病を良くしないといけないのはなぜ?

 

「そもそもどうして糖尿病は良くしないといけないのでしょうか?」

私はまず初めに患者さんにこう聞くことにしています。皆さんならどう答えますか?

糖尿病で来られる方の大半は特につらいこともないのになぜ?という方ばかりです。これががんなら、良くしてもっと生きたいとか、腰痛なら痛みをなくしたいとか、風邪なら喉の痛み、熱、咳をなくしたいなど、皆さん良くする目的がわかりやすく、良くしたいという意識が強くなります。しかし糖尿病は自らの症状がもともとないことが多く、良いか悪いかも血液検査の数値に頼らざるえないため、良くする目的や意識が弱くなりがちです。ですので初めの問いに答えることは難しいのです。

私は、まず患者さんに「つつがなく人生を楽しんでいくためですよ」と話します。これには二つの意味があります。一つは合併症を減らすことでつつがなく暮らすという意味。糖尿病そのもの自体で命を落とす人は少ないのです。ではどうして糖尿病が良くないかというと、糖尿病で心筋梗塞や狭心症になったり、脳梗塞になったり、失明の危険が上がったり、腎臓が悪くなったり、足がしびれたり痛んだりします。これらはいわゆる合併症というものです。

実は糖尿病は、全身の血管をボロボロにする病気なのです。人間の体は髪の毛など一部の組織以外すべて血管で養われています。例えば水道管が穴だらけだったら、洗濯、お風呂、料理もできなくなり不自由になります(災害時を思いだしてください)。ヒトの体でそれに相当する血管がボロボロになれば、様々なことが起きてしまうのです。最近では糖尿病になると認知症、がん、うつ病、骨折、歯周病にもなりやすいことがわかってきました。

どれも命を落とすかもしくは、良い日常が過ごせなくなくなるような病気です。これらを引き起こす糖尿病は悪の権化、仮面ライダーで言えばショッカー、バットマンで言えばジョーカーのようなものです。ボスを倒さなければ、平和がやってこないように、糖尿病をコントロールしないと、そのために起きる病気(合併症)だけに立ち向かっても限界があります。

「つつがなく人生を楽しんでいく」ことのもう一つの意味は、糖尿病の改善自体を目的にしないということ、あくまで楽しく人生を歩んでいくことが目的で、糖尿病を良くするのはその手段であるということです。糖尿病は良くなったが、その代わりに楽しい食事や友人との会食、趣味をあきらめるのでは人生はハッピーになりません。目的と手段が反対では本末転倒です。

そんな糖尿病ですが、付き合っていく理由がわかれば、孫子の兵法「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」。できるだけ楽しく付き合っていくことを考えましょう。

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医師プロフィール

篠田 和明 糖尿病内科

港南台内科クリニック 院長
新潟県出身。筑波大学第2学群在籍後、再受験で新潟大学医学部へ、卒業後、湘南鎌倉病院で臨床研修経て、横須賀共済病院、横浜市立大学附属病院、
その後、横須賀にて糖尿病は中島内科クリニック、在宅は三輪医院、認知症は汐入メンタルにて経験を積み、2014年、さまざまな先生のバックアップのおかげで横浜、港南台の地で開業する。現在は、それらの経験を生かし、糖尿病、認知症、在宅を統合しながら、これからの超高齢化社会のなかで患者さんに対応した診療、医療の構築の手伝いができたらと日々、悪戦苦闘中

篠田 和明
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