coFFee doctors – 記事記事

日本の医療をケニアへ[2]ケニアの医療の問題点

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 1

記事

ケニアの医療には多数の問題点があります。その中にはやはり人材不足や機材の不足など医療資源の問題も入ってきます。

 

ケニアの首都ナイロビの医療はアフリカの中では決して劣っていませんが、これはあくまでも都市部にある私立病院などの医療基準であり、これらを受けられる人たちはケニア人口の2割にも満たない富裕層だけです。ケニア人口のおよそ8割の人たちは満足な医療を受けられない、あるいは医療の手が届かないまま人生を終えているのが事実です。

ケニアの医療面に数ある問題から、いくつかを挙げてみます。

1.医療資源の不足

(1)人材不足

(2)医療提供の場の不足

(3)機材、薬剤などの不足

2.低受診率から受診後の高死亡率

3.衛生面での環境の劣悪さ

4.HIV/AIDSの問題

5.医療保険制度の不備

 

今回はこの中でも最も私自身が興味のある「1.医療資源の不足」に関して述べてみたいと思います。

ケニアで医師免許を取得し、研修を2年やるとMedical Officer(M.O.)(専門的にまだ進路を決めていない医師の事をいう)になり、公立病院、主に県立病院で医師が足りない科の担当医として外来から入院患者まで診るようになります。

ケニアの都市部以外の病院はどこも外科、内科、産婦人科、小児科と大きく4つに分けられており、各科に一人の専門医がいます。ですが、専門医の数が少なく、ほとんどがナイロビに住まいを持っているので、一人の専門医が複数の病院を担当することが当たり前になっています。ですので、専門医が病院に来るのは週に2、3回ほど、というのが現状です。

病院ではM.O.達がとても重要な役割を果たします。毎日M.O.が新米の研修医たちと回診を行い、外来を行います。専門医の先生は電話で相談を受け、緊急オペが必要になった場合はナイロビから数時間かけて病院にやってきます。もちろん「今は行けないので」と一言で電話の会話が終わることも多々あります。

ケニア奥地のほとんどの県立病院では画像的診断ではレントゲンしかないため、せっかく大学で学んだ知識(心電図、エコー、CT、MRIの読影等)が生かされず、医師たちは臨床的な診断・判断能力ばかりを高めていきます。だが、限界があるためそれ以上伸びる事はありません。むしろ画像的読影能力(CTやMRIを使って診断を下す能力)は退化します。

このように十分な設備がない地域では、例えば脳卒中の場合、梗塞なのか出血なのか判断が難しい患者はそのままCT・MRIがあるナイロビまで送られます。急性心筋梗塞などでももちろん数時間かけてナイロビに搬送されるので、途中で死亡するケースも少なくありません。

日本の医療をケニアへ[1]ケニアにおける医療の現状

日本の医療をケニアへ[3]「慢性化した医師」の存在

  • 1

医師プロフィール

塩尻 大輔 

小学校3年生の時に家族でケニアに移り住み、そこから21年間をケニアで過ごす。ケニアの高校を卒業後、NPOアフリカ児童教育基金の会(ACEF)プロジェクトマネージャーとして働き、オーガニック農業EM(effective Microorganisms)等を担当。同時に在ケニア日本大使館、外務省草の根基金部門でのモニター調査員も務めた。その後ナイロビ大学医学部に入学し2009年に卒業、ケニア国医師免許を取得。ケニア国キトゥイ県立病院での研修を経て、2011年東京大学医学部附属病院形成外科にて研修。2013年日本医師国家試験に合格し日本の医師免許を取得。現在は岩手県立磐井病院にて研修中。

塩尻 大輔
  • まゆみっこ

    塩尻様
    番組等拝見しました。ご活動に感銘を受けました。何かお力になれたらと思います。宜しくお願い致します。

↑