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INTERVIEW

特定非営利活動法人 日本医療政策機構 代表理事

内科・医療政策

黒川 清

グローバル世界で活躍する日本人を育てる

組織を離れた「個人」としてアメリカで診療、研究、教育に携わり、ユニークなキャリアを積み上げてこられた黒川清先生。黒川先生が委員長を務めた国会の立法による東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の報告書は、世界で高い評価を受けました。その報告書で指摘された日本社会の大きな問題点は、国民の安全よりも前例の踏襲や組織の利益を優先する組織依存のマインドセットです。日本の常識として染み付いた「単線路線」を抜け出し、日本人が世界で活躍するために必要なことを教えていただきました。

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失敗を恐れ、問題を先送りする「同質性」

現在の日本の問題点は何でしょうか?

東日本大震災が発生して福島の原発事故があり、それまでうまくいっていると思われていた日本社会の脆弱さが一瞬にして世界に丸見えになってしまいました。私は原発事故の直後からTwitterで海外の記者が発信する福島の情報を追いかけて、リツイートしていました。新聞やテレビなど国内の報道では原発事故の状況がはっきりしなかった。そのうちに、危機にある日本を世界がどう見ているかということがどんどん分かってきて、このままでは日本国家の信用もメルトダウンすると思いました。発生から一週間で「独立した国際的な調査組織をつくるべきだ」と、4枚紙を書いて当時の菅首相に届けに行き、さらに、国会議員だけでなく米国科学アカデミーなどとも連絡を取り、調査委員会の設立に向けたやり取りを始めました。

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会で導き出した原発事故の根本的な原因は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本に多くある組織構造と、それを当然と考える日本社会特有の同質性の高さです。日本では新卒で会社に入ればずっとそこにいるのが当たり前。課長になって変なことをすれば部長に嫌われて左遷や出向になり、そうでない人が役所や大企業で昇進して、より責任のある立場に着いていきます。ですから「単線路線」で上がってきたエリートは失敗を恐れて問題を先送りし、責任の所在をはっきりとさせず、無責任になっていくのです。このような社会では、日常的に「異論」を発言させながら議論する習慣が少ない。大学などの研究機関でも同じような問題が潜在的に存在しています。日本は各自でやっている研究はそれなりのものではあるけれども、大きな枠組みで世界で活躍する人を育てることはできていません。

「独立した個人」として他流試合をする

科学研究に関する日本の教育についてはどうお考えですか?

日本の中等教育は大学受験に向かう「単線路線」になっていますが、私が思うのは予備校に通えば受かるような大学に意味があるのか、ということです。海外の主要大学では知識を記憶させるのではなく、問題を見つけ、議論を交わしながら解決していくプロセスの中で、各個人の能力を引き出し発揮させる教育が行われています。ところが日本の大学は「家元制度」に近く、家元の教授の命に従いながら後を継いでいく競争の「タテ組織」で、基本的には江戸時代のようなことをいまだにやっています。若い人たちが教授の手足のようになっており、大学に所属したまま留学することはあっても「独立した個人」として広い世界に出ていき他流試合をすることはありません。これでは才能の無駄遣いです。

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PROFILE

黒川 清

特定非営利活動法人 日本医療政策機構 代表理事

黒川 清

1962年東京大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科にて医学博士を取得後、1969年に渡米。ペンシルベニア大学、南カリフォルニア大学などを経て、1979年カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授に就任。1983年より東京大学医学部助教授、1989年より東京大学医学部教授。1996年東海大学医学部教授、東海大学医学部学部長に就任、2002年より東海大学総合医学研究所所長を務めた後、2006年政策研究大学院大学教授に就任、2009年より政策研究大学院大学アカデミックフェロー、2014年より政策研究大学院大学客員教授。

日本・カリフォルニア州医師免許、日本・米国の内科専門医等。日本学術会議会長、内閣府総合科学技術会議議員、内閣特別顧問、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長等を歴任。AAAS(American Association for Advancement of Science)Award for Scientific Freedom and Responsibility、100 Top Global Thinkers of ‘Foreign Policy’など受賞多数。著書に『世界級キャリアのつくり方』(共著、東洋経済新報社)、「大学病院革命」(日経BP社)他。

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