INTERVIEW
再び沖縄で奮闘中 総合診療のパイオニア
2024年、挑戦する医師につながるサイト「coFFee doctors」は10周年を迎えます。多くの先生方のご協力があったからこその10周年。そしてこの間、社会の変化とともに、医師を取り巻く環境も大きく変化してきました。そこでこれまでの感謝も込めて、過去にインタビューさせていただいた先生方が現在、どういったことを考え、どのような活動に注力しているのか伺う企画「coFFeedoctors 10years」を始めます。
第2弾は、徳田安春先生。総合医臨床教育の第一人者として知られる徳田先生は、筑波大学教授や独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)本部顧問を歴任し、一貫して総合診療マインドの醸成に尽力してきました。その徳田先生の目には、日本における総合診療の現在がどう映っているのでしょうか。
群星沖縄臨床研修センターは、沖縄県内の民間病院群のアライアンスに基づき設立された、病院横断型の初期研修プログラムを担う機関です。病院群は基幹型病院が8施設、協力型病院が約20施設で構成され、センターは各病院から独立して、初期研修プログラムの策定サポートを行っています。
2004年に新医師臨床研修制度が導入され、2年間の臨床研修が必修化されたことを契機に、病院群による臨床研修のプロジェクトが発足し、当センターが誕生しました。1つの民間病院で初期研修プログラムを作るとなると、病院単体では全ての診療科をカバーしきれないなど限界があります。そこで、各病院が協力してそれぞれの得意分野をシェアすることで、病院群のスケールメリットを活かした研修プログラムを開発することができるのです。
当センターのプログラムは、長年救急とプライマリ・ケアを重視してきた沖縄特有のプログラムを拡張させた内容で、重症患者や救急患者の初期診療も重点的に学べる点に特徴があります。2年目にもなると、1年目の研修医を指導することもできます。ジェネラルな診療スキルを2年間で身につけることができます。
提携病院の中にはハイパー病院と言われる救急病院もあり、研修内容がややハードな病院もあります。しかし当センターでは開設以来、17年間で相当な数の研修医が巣立っていますが、これまでドロップアウトした人はほとんどいません。
1つは、昨今の働き方改革の流れも受け、あまり過重労働の環境をつくらないように各病院が配慮しています。例えば病棟の当直明けは、できるだけ午前中で終了して帰らせるようにしています。
もう1つには、アライアンスを組む病院群においては、コラボレーション(助け合い)がカルチャーとして根づいています。体調が悪い研修医がいたら別の研修医が当直を替わってあげる。看護師や指導医が業務を助けてあげる。研修医や看護師、指導医がチームとなって助け合うのです。
時々ハイパー病院で問題になるのは、個人個人の競争が激しいこと。医学部を卒業した人は、子どもの頃から否応なくコンペティションにさらされてます。ずっと受験勉強をクリアし続け、医学部に入ってからも試験をずっと受けさせられる。国家試験も事実上の相対評価です。そういう環境で、頭が「コンペティション脳」になっているのです。
私たちのセンターでは「コンペティションではなくコラボレーション」。実際、今日の世界では医療体制もチーム医療が中心です。コメディカルの方も事務の方も含めて、みんなが協力しあって患者さんをケアする。それが、患者さんにとっても望ましい医療体制ですよね。そういったコラボレーションのカルチャーがあるからこそ、これまでドロップアウトした人がほとんどいないのです。
PROFILE
一般社団法人群星沖縄臨床研修センター
徳田 安春
1988年琉球大学医学部卒。沖縄県立中部病院にて臨床研修後、沖縄県立八重山病院、沖縄県立中部病院、聖路加国際病院、筑波大学附属水戸地域医療教育センター・水戸協同病院総合診療科教授、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)本部顧問を歴任。一貫して「日本版病院ジェネラリスト(ホスピタリスト)」の育成に注力し、筑波大学では、国立大学では初となる民間病院(水戸協同病院)に地域医療の教育センター(筑波大学附属水戸地域医療教育センター)を設置、総合診療科を中心とした完全型Department of Medicine体制(水戸モデル)を確立した。2017年、沖縄県内の8つの基幹病院を中心とした病院群から成る臨床研修拠点・一般社団法人群星沖縄臨床研修センターのセンター長を宮城征四郎前センター長より引き継ぎ就任。