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INTERVIEW

国立成育医療研究センター

社会医学研究部部長

森崎 菜穂

子どもの成長を支える仕組みづくりへ

国立成育医療研究センター社会医学研究部部長の森崎菜穂先生は、子どもたちの健康と成長を支える公衆衛生の分野で幅広く活躍しています。妊娠中の栄養管理や思春期のメンタルヘルスに関する研究を通じて、子どもたちの健やかな成長をサポートするためのエビデンスを創出し、制度を通じた社会課題解決に取り組みます。さらに、小児科医や公衆衛生の研究者としてのキャリアを築き、後進の育成にも力を注いでいます。このインタビューでは、森崎氏の研究活動やキャリア、今後のビジョンについて語っていただきました。

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子どもたちのため、多方面から公衆衛生の研究に携わる

―現在の主な活動を教えてください。

国立成育医療研究センターでは社会医学研究部の研究部門をマネージしながら、一研究者としても研究しています。当センターは、日本で唯一の妊婦・子どものためのナショナルセンターであり、私たちの社会医学研究部では社会環境整備に貢献できる公衆衛生のエビデンスを算出することを目指しています。

現在、主に医師や保健師などからなる8名の研究者がチームにいて、虐待予防や思春期のメンタルヘルスなど子どもに関する問題から、少子化対策や不妊、妊娠しやすい環境作りなど生殖・周産期に関わる問題も含めて幅広い社会課題に対する研究を行っています。

私の役割としては、自分の専門である周産期の研究を行いながら、母子に関する幅広い公衆衛生分野の人材発掘と育成。特定のテーマに限定されず、さまざまなトピックに対応する研究者がさまざまなプロジェクトを実施しやすいよう、サポートしています。

―森崎先生が最も興味を持っていることは何ですか?

研究者としてのキャリアを振り返ると、子どもたちが元気に生まれ育つために必要な栄養に関する研究を長年行ってきました。特に妊娠中の栄養管理について、日本では若年女性のやせが問題となっています。妊婦さんが十分な栄養を摂れないことで結果的に低出生体重児が増えていることから、産婦人科の先生たちと連携し、適切な体重管理や食事・運動の指導方法に関するエビデンスを作成。現在は指針にも反映いただけています。現在は、この体重管理を満たすために摂るべき食事内容についての研究も進めています。

もう1つはここ数年での取り組みで、思春期の子どものメンタルヘルスに関する研究です。この研究は私の専門というよりも、社会的な課題に対して行った研究で、コロナ禍をきっかけに2020年から始めて今年で4年目です。

思春期の子どもの心や体の健康課題に関する研究は少ないのが現状です。しかしコロナ禍で本分野の重要性が浮き彫りになったので、今後の世の中の仕組みづくりに貢献できる研究を行っていければと考えています。

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PROFILE

森崎 菜穂

国立成育医療研究センター

森崎 菜穂

国立成育医療研究センター社会医学研究部部長
2007年、東京大学医学部医学科を卒業。沖縄県立中部病院にて小児科初期研修修了。2009年から東京大学小児科後期レジデント。東京大学医学部附属病院や東京都立墨東病院、東京都立小児総合医療センターに小児科・新生児科医師として勤務。2012年、ハーバード公衆衛生大学院 公衆衛生学修士号取得。2013〜2015年に東京都立墨東病院などで、ハイリスク児フォローアップ外来の医師として勤務。2015年、東京大学医学系研究科医学博士号取得。2015〜2020年に国立成育医療研究センター社会医学研究部ライフコース疫学研究室長を務め、2021年4月から現職。医学博士、公衆衛生学修士、社会医学指導医、小児科指導医。

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