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INTERVIEW

国際医療福祉大学病院 教授

耳鼻咽喉科医

中川 雅文

目には眼鏡、それでは耳には?

『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)出演などで、注目を浴びている耳鼻咽喉科の中川雅文先生。オヤジギャグが出てくるのも、認知症になるのも、全て耳の衰えが原因!?「見えない障害」である難聴に私たちはどう向き合うべきなのか。「耳」について教えていただきました。

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見えないがゆえの問題点

難聴は「見えない障害」とのことですが、それはどういうことでしょうか?

聴覚は、視覚と同じ「五感」の一つですが、その大切さは視覚と比べると認識されにくいところがあります。目であれば、悪くなったときには眼鏡やコンタクトレンズがありますし、目薬やアイマスクのように目をいたわるものもたくさんあります。一方、耳はどうでしょう。多少耳が聞こえなくても、目と同じように気にしたり、いたわったりする人は少ないのではないでしょうか。

耳が聞こえない人のためには補聴器がありますが、眼鏡とは違い、補聴器をつけているとあまりよくない意味で目立ちます。耳は加齢とともに衰えますから、政治家などでも補聴器をつけている人は多くいますが、彼らは写真撮影のときは「補聴器をつけているとイメージが悪くなる」と言って補聴器を外すのです。

難聴を抱えている人は、ほかにも不利な面があります。会社が人を雇うときに、目が悪いからと言って眼鏡をかけている人を不採用にすることはないでしょう。視覚の場合は「矯正視力」という概念があり、健康診断の結果にも「眼鏡をかければ問題なし」と書かれます。けれども聴覚の場合は、「難聴ありだが補聴器をつければ問題なし」と書く欄はありません。

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実際に、65歳以上の再雇用で能力もスキルもある人が活躍できない一番の理由は、難聴を理由に面接を落とされてしまうことなのです。補聴器をつければ仕事に一切影響はないにもかかわらずです。

学校でのいじめの問題にも難聴が隠れていることがあります。聴覚障害がある子の一部には、聴覚検査では正常だけれども高音だけ聞こえないという子がいます。高音が聞き取れないと、電子体温計の音や電子レンジの音のようなアラーム音が聞こえません。さらに、学校だとチャイムの音が聞こえないのです。

会話は普通にできますし、授業が終わる時は周りの子たちがガタガタと動き始めるのを見てわかります。だから、先生も周りの子たちも障害があるとは気づきません。でも、授業開始のチャイムが聞き取れないと、休み時間にしていたドッチボールをみんながパッとやめた後も、そうとわからずにボールをぶつけてしまう。教室に戻るときも、みんなが一斉に戻った後で、その子はいつも最後になってしまう。そうしていじめの対象になってしまうことがあるのです。私が「見えない障害」と呼んでいるのはそういう意味です。

音の問題というのは、見えるようにすることがすごく難しいのです。目の問題だとうまく解決できることでも、耳の問題だと、見えないがゆえに苦労することがたくさんあります。難聴は、ほかの人にはその困り具合が理解しにくいものです。目の見えない人であれば、「ああ、これは見えないんだ」と共感してもらえるところでも、耳が聞こえない人は、それが周囲にわかりにくいので、黙ってつまはじきにされてしまう。今は小学生でも眼鏡をかけている子が多いので、目が悪い人は「普通」の存在ですが、難聴者の存在についてはまだ十分に認識されていないのが現状です。

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PROFILE

中川 雅文

国際医療福祉大学病院 教授

中川 雅文

1986年 順天堂大学医学部卒業。医学博士
順天堂大学医学部講師、私学事業団東京臨海病院耳鼻咽喉科部長、順天堂大学医学部客員准教授、みつわ台総合病院副院長などを経て、国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 教授
著書に『「耳の不調」が脳までダメにする』(講談社)『耳トレ!-こちら難聴・耳鳴り外来です』(エクスナレッジ)ほか

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