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介護業界の課題を解決する!? 真の対話に必要なこと

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団塊の世代が75歳を迎える2025年までに、介護に関わる若手は何を身につけ、どうあるべきなのでしょうか。HEISEI KAIGO LEADERSが主催するイベント「PRESENT」では、その学びの場を提供しています。イベントのファシリテーターは、積極的に介護職の方々との交流を持つ家庭医の田中公孝先生。「PRESENT」ではどのようなことを学べるのか、8月8日に行われたイベントにお邪魔してきました。

「PRESENT」のファシリテーターを務める田中先生とイベント運営メンバーは、第2回目の開催テーマに「対話」を選びました。介護の世界では、早期離職、介護うつ、虐待、介護放棄などさまざまな課題があり、その多くが「人間関係」と深く関わっています。「対話」を通して良好な人間関係を築くことが、これらの課題の解決につながると考えたためです。
今回のゲストスピーカーは志村真介さん。視覚障がい者のアテンドを受けながら、完全な暗闇の中でさまざまな体験をする「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を日本に初めて持ち込んだ方です。暗闇の中では、視覚的な情報が遮断され、目の前にいる人がどのような人かを判断しにくくなります。そのため、立場を気にせず「一個人」として、本音で対話しやすくなるのです。

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志村さんの講演はワークを挟みながら行われました。最初のワークでは、参加者それぞれが対話で解決したいことを考え、グループで共有しました。「職種が違うと暗に上下関係ができてしまい、言いたいことを言いにくい」「職場に国籍が違うスタッフがいるが、なかなかこちらの言うことを理解してくれない」など、さまざまな課題が挙がりました。

続いて、これらの課題をどうやって解決していけばよいか、志村さんからお話がありました。対話の第一歩は、「相手との違いを知ること」です。

「どちらか一人が相手に合わせることで理解し合おうとすると、一方の人が無理をすることになり、いつかは崩壊してしまいます。お互いの背景やポリシーを保ったまま理解し合うためには、そこに何か別のものを取り入れることが大切です。

例えば暗闇は、いつもとは異なる場です。全く違うものを取り入れることで『相手との違い』が浮き彫りになり、それこそが対話への第一歩となります」

志村さんご自身は、「自分の感情をなるべく入れずに、ニュートラルな状態で人の話を最後まで聞くこと」「朝、知らない人に挨拶をすること」「高速道路の料金所の方に微笑むこと」などを実践しているそうです。自分の感情や思考パターンにとらわれることも、お金を払ったほうが偉いという感覚も、相手との違いを知ろうとするときには邪魔になります。それらを取り払い、相手の感情に気付く力を日々少しずつ鍛えているとのことでした。

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講演を聴いた参加者は、相手と対話するために明日から実践していきたいことを考え、共有しました。「相手の立場になって考え、その人は何を求めていて何をしたいのかをまず想像する」「職種が違えば持っている知識も当然違う。そこに引け目を感じるのではなく、立場を超えた一人の人という意識を持って話をする」などの意見が出ました。それぞれが「対話のために必要なこと」を具体的に落とし込むことができたようです。

イベントの最後には、参加者全員で目を閉じました。手探りで両隣の人の手を握ると、その温かさを感じました。左右の手の大きさや形の違いからも、一人一人が全く違う存在であることを改めて知ることができました。立場や肩書き、経歴などを気にしない「個」と「個」の関係は、手をつないで相手を感じている状態と同じです。立場を超えたフラットな関係を味わったところで再び目を開けると、先ほどよりも会場の空気が柔らかくなったようでした。

上司や同僚、他の業種の人と自分とでは、経験してきたことも学んできたことも違います。その違いを知った上で相手と対話ができれば、本音と本音で向き合うことができます。対話のできる関係が広がれば、人間関係の問題は少しずつ改善に向かい、それが原因で起きている介護現場での課題を減らすこともできるでしょう。

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(取材日 / 2015年8月8日、取材 / 北森 悦)

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医師プロフィール

田中 公孝 家庭医

2009年滋賀医科大学医学部卒業。2011年滋賀医科大学医学部附属病院にて初期臨床研修修了。2015年医療福祉生協連家庭医療学開発センター(CFMD)の家庭医療後期研修修了後、引き続き家庭医として診療に従事。医療介護業界のソーシャルデザインを目指し、PRESENT運営メンバー(企画、ファシリテーション担当)として、介護業界の若者のコミュニティ「HEISEI KAIGO LEARDERS」に参加。

http://heisei-kaigo-leaders.com/

田中 公孝
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