現地医師が見た、カリフォルニアの医療事情[3]
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アメリカの病院で急速に広まった「ホスピタリスト」制度。近づきつつあるのは、従来日本にある医療システム!?
私がアメリカで臨床研修を始めた2001年ごろは、昔ながらの開業医が、昔ながらの診療をしていました。アメリカでの昔ながらのスタイルというのは、開業医の患者が病院に入院すると、その開業医がそのまま病院主治医として病院回診も行うというものです。開業医は、早朝、自分の外来が始まる前や、夜、外来の終わった後に病院に立ち寄り、入院している自分の患者を診察して検査や治療のオーダーを出していくのです。病院は医療器具のそろったホテルのようなもの、患者はそのホテルの宿泊客、医師は宿泊客のために外から呼ばれるマッサージ師、というような関係でした。
しかし、そのころから、次第にホスピタリストという概念が出てきました。ホスピタリストというのは、入院・治療施設を提供するだけだった病院が、自分の施設に入院した患者の診療のために雇った自前の医師団のことです。
ホスピタリストは入院患者治療のスペシャリストです。外来は持ちません。入院日数を比較すると、開業医が担当した患者よりも、ホスピタリストが担当した患者のほうが短くなることが統計上明らかとなっています。病院としては、入院日数が少ないほうが、儲けが増えるので、これを使わない手はありません。
ホスピタリスト制度は、新しいビジネスモデルとして急速に全米に広まりました。現在では、自分の患者が病院に入院した場合、多くの開業医がホスピタリストに任せているのではないでしょうか。しかし、日本から来た私にとっては、これが当たり前のことにしか見えなかったのも確かです。日本では昔からこのようなシステムになっていたからです。
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医師プロフィール
齋藤 雄司 循環器内科
新潟県出身。新潟大学医学部卒業後、同大学内科研修、大学院修了。血管生物学の基礎研究に従事するためポスドクとして渡米。その後、ロチェスター大学関連病院内科レジデント、カリフォルニア大学アーバイン校循環器フェロー、カリフォルニア大学サンディエゴ校心臓電気生理フェローなどの臨床トレーニングを行う。バッファロー大学内科クリニカルインストラクターを経て、現在は、カリフォルニア州モントレー郡の開業循環器グループに所属。不整脈を含む心臓病診療に従事する。