オンライン病気辞典「MEDLEY」 メディアの枠を超え目指すものとは?
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株式会社メドレーの代表取締役医師の豊田剛一郎先生は、日本の医療課題解決には、患者の医療リテラシーを上げることが必要不可欠と感じていました。そこで2015年2月より株式会社メドレーの現職に就任し、疾患や薬、医療機関の情報を網羅したオンライン病気事典「MEDLEY」を立ち上げました。この「MEDLEY」、ただ医療情報を発信しているだけではないそうです。その意図するところとは?
現在、病気の説明を提供しているサイトは数多くありますが、例えば「糖尿病だと脳梗塞を起こす可能性がある」と書かれていても、どう関連しているのか、実際にどういう薬を使うのか、薬の副作用は何かなど、関連情報も同時に分かるメディアはありません。
ところが患者さんとしては、病気の説明だけで満足することはなく、どういう病気でどんな治療法があって、どのようなリスクを抱えているのか、どうやってそれを緩和していくのかなど、どんどん関連した項目が知りたくなるものです。しかし、そのような情報がまとまったページはインターネット上になく、あったとしても数年前で更新が止まっていて古い情報となっているなど、患者側が正しい情報を得るのは非常に難しい状況です。
「そこを埋めて、非医療者の医療リテラシーを上げたい」
そう思いオンライン病気事典「MEDLEY」を立ち上げました。
◆医療版ウィキペディア「MEDLEY」
2015年2月にスタートしてから1年が経ちました。約350名の医師に手伝っていただき、情報の改訂を繰り返しながら精度を上げ、現在は約400の疾患情報、論文を始めとした医療ニュースや約3万点の薬剤情報、約16万件の医療機関情報を載せています。
さらに、読んで終わりのメディアを作るのではなく、患者の行動につながる情報やサービスを提供したいと考えています。MEDLEYでは、「めまいがする」などの症状を入れ、それらの症状がみられる病気を検索する機能があります。患者さんにとっては、症状から「何の病気だろう」と考え、MEDLEYで病気を調べることが一般的です。そうした方が、症状を入力し、さらに候補として現れる症状について「ある」「ない」を追加していくことで、可能性が高い病気にたどり着ける仕組みになっています。さらにそれぞれの病気ページでは、病気についての基本的な知識や治療法、最新論文などが掲載されているほか、対応する診療科を持つ医療機関が分かるようになっています。
こうして、医療機関を選ぶ、治療法を選ぶなど、患者さんが決断をする際に参考にできる情報を網羅的に提供することを目指しています。
一方で、患者さんにとって有益な情報は、医療者でも使えると考えています。昨年10月ごろから、医師に「MEDLEYポストイット」を配り始めました。外来の際、医師がもっと患者さんに病気の知識を話したいと思っても時間がないときに、「MEDLEYで検索してください」とこのポストイットに書いて渡すようにしてもらっています。現在、数百人の医師に使ってもらっていますが、このように実際の医療現場で活用していただけることが、掲載情報への信頼の証とも言えます。
◆MEDLEY情報の使い方
すでにMEDLEY内には、症状から病気、医薬品まで、あらゆる最新情報が蓄積されています。これらのデータを活用し、ほかのサービスと連携していくことも考えています。
遠隔診療の補助的役割を担うということが一つの例です。患者さんの中には、しっかり病気に向き合っていて必ずしも頻繁に病院に通わなくてもいい方もいます。医療を良く理解する患者さんが増えれば、患者さんにとっては来院頻度が減り、医療者にとっても負担が減ります。そうすれば、対面での診療回数を減らし、代わりにビデオチャットによる診療でフォローアップすることも可能だと考えています。
私たちは今年2月に、Webを通じて予約からビデオチャットでの診察、決済や薬・処方箋の配送までを提供できるオンライン通院システム「CLINICS(クリニクス)」を開発しました。対面とオンラインを組み合わせることで、患者の通院負担を減らしたいという思いを持つ方々に支持いただき、すでにいくつかの医療機関で導入が始まりました。そこでうまくMEDLEYも活用できるのではと思います。
そして3月には、クリニカル・プラットフォーム株式会社のクラウド電子カルテ「Clipla(クリプラ)」へのデータ提供も始まりました。Cliplaに傷病名を入力するとMEDLEYの該当ページへのリンクが自動生成され、そのリンクをクリックするとMEDLEYに載っている情報が表示されるのです。
こうした連携で、医師の患者への疾患説明サポートとして利用することも一つの活用方法です。
情報を発信するメディアという枠を超えて、医療者・患者双方をつなぎ、納得いく医療を実現するためのプラットフォームとなることを目指し、今後も活用の可能性がある分野に広げていきたいと考えています。
医師プロフィール
豊田 剛一郎 脳神経外科
株式会社メドレー 代表取締役医師
1984年生まれ。東京大学医学部卒業。聖隷浜松病院で初期研修後、NTT東日本関東病院脳神経外科での研修を経て、米国のChildren’s Hospital of Michiganに留学。2013年にマッキンゼー・アンド・カンパニーにてヘルスケア企業のコンサルティングに従事。2015年2月より現職。