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睡眠の臨床研究を発展させたい

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記事

医師5年目の和田真孝先生は現在、慶應義塾大学大学院で精神科領域の研究に従事しています。将来的には睡眠の臨床研究を発展させたいと考えて、医師5年目から研究に注力することを決めたそうですが、決意までには葛藤もあったそうです。どのような想いから研究の道へと進むことを決意したのでしょうか?

◆睡眠の「臨床研究」がしたい

―現在、どのような活動をしているのですか?

2019年4月から慶應義塾大学大学院に入り、現在はほとんどの時間を研究に費やしています。私が取り組んでいるのは臨床研究なので、臨床業務で病棟患者さんの診療をする一方で、多くの時間は研究に充てています。

私が所属している研究室では、人に侵襲を加えないで脳の機能などを調べる技術の開発を進めています。現在私が行っているのは、磁気の力を使い頭の外から脳を刺激することで治療を行うrTMS研究と、TMS刺激を受けた時の脳波を見ることで脳の神経伝達物質の活性化の具合を推定するTMS-EEG研究です。

私自身は今後、睡眠の臨床研究がしたいと考え、今の研究室に所属しています。睡眠をテーマにした研究は、基礎研究領域では多くなされていますが、一方で臨床研究はあまりされていません。また、睡眠の基礎研究ではさまざまな方法でマウスの脳の働きを研究するのに、臨床研究になるとアンケートなどに留まっているのも問題の1つだと感じていました。これまで人間の脳を直接的に調べる手法はMRIや脳波に限られており、それ以外の手法は考案されてきませんでした。そのため、人でももう少し直接的に脳の動きを調べる研究方法が必要だと感じました。

私が所属する研究室で開発を進めている技術は、まさに睡眠を調べる際にも役立ちます。特に神経伝達物質の異常は不眠症にオーバーラップしている部分もあるので、まずは今所属している研究室で、脳の機能を外から調べる手段を学びたいと思っています。

―なぜ睡眠の臨床研究がしたいと思ったのですか?

医学の多くの領域は、マイナスをゼロに治すことが多いです。一方で睡眠医学は、疾患のある人だけでなく、疾患がない人にもさまざまな形で利益をもたらすことができる領域です。つまり、工夫次第ではゼロをプラスに引き上げることができる領域だと考え、興味を持ちました。

さらに先程も少し触れましたが、意外と臨床研究で取り組んでいる人がいなかったのも私にとっては魅力の1つでした。もともと人と違うことをやりたい性格だったので、これは面白いと思って睡眠の臨床研究に取り組もうと考えました。

―なぜそこまで「睡眠」に関心を寄せるようになったのですか?

振り返ってみると、「進化論」が好きなことが影響しているかもしれません。「進化論」は、人間がどのように形成されたのかを分子レベルから全て説明することができ、一部の疾患の成り立ちやメカニズムまでも説明しています。

ところが、「なぜ睡眠が必要なのか」に関しては未だに解明されていません。睡眠は、脊柱動物全てに共通する行動ですが、睡眠中は非常に無防備で、捕食されるなど大きなリスクが伴います。例えばイルカは、海の表面まで上昇し呼吸をするために脳を半分ずつ眠らせます。また渡り鳥は一旦眠って落下し、墜落直前に目覚めて再び上空に戻り飛び続けるという非常に危険な方法を用いてまで睡眠を行っています。その様なリスクが高い行為は、生きていくためには無駄な特性であり、進化の考え方からするとその様な特徴を持った個体は淘汰されるはずです。

そこまでの危険を犯してもなお全ての脊椎動物が睡眠をとっているということは、それだけ睡眠は大事なものだと分かります。ところが、なぜ睡眠を取る必要があるのかはまだ分かっていない。だからこそ、それは非常に神秘的で解明する価値があると思ったのです。

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医師プロフィール

和田 真孝 精神科

埼玉県出身。2015年慶應義塾大学医学部卒業。同大学病院にて初期研修修了、精神・神経科に入局。2019年4月より同大学大学院に進学、精神・神経科学教室にて研究に従事する。

和田 真孝
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