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「総合診療×エコー」で将来の可能性を切り開く

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医師6年目の植村和平先生は現在、総合診療専攻医でありながら、エコーに関する学術発表や講演、執筆活動を精力的に行っています。「エコーを武器に総合診療医として活躍したい」と語る植村先生は、どのような展望を思い描いているのでしょうか?

◆「総合診療×エコー」を軸に

――総合診療科の道に進んだのはなぜですか?

初期研修医の頃、エコーを自分の軸にしたいと思ったんです。ただ、どの診療科に進んだら自分が思い描くような形でエコーを軸にできるのかと迷っていたところ、私と同じく北海道家庭医療学センターで研修を受けて総合診療科に進んだ先輩から「それなら総合診療でしょう」とアドバイスをいただいたことがきっかけです。その先輩は中学・高校・大学が一緒で、研修先も同じ。それで総合診療に縁も感じて、総合診療科に進むことにしました。現在は「総合診療×エコー」で活躍できるよう研修中です。

――なぜエコーを軸にしたいと思ったのですか?

出身大学である自治医科大学では「胃カメラ検査とエコー検査はできるようになっておけ」と言われていました。その言葉通りに、2つの検査はきちんと学んでおこうと考え、初期研修1年目の冬頃からエコーに関連するセミナーや学会に参加し始めたのです。それで「エコーを武器にしたい!」と思うようになりました。 

なぜそう思ったかと言うと、主な理由は2つあります。

1つは、エコーを活用できる領域はかなり広いと思ったこと。エコー検査がメジャーな検査になっているのは、消化器内科や循環器内科。あとは整形外科領域で、運動器を評価することや関節や神経のエコーガイド下注射が広がり始めていること。さらに眼球や食道など、今までエコーを当てたことがなかった部分でも活用され始めていることを知ったのです。エコーは自分が想像していた以上に活用の幅が広く、今後さらに広がっていく可能性があると感じました。

2つ目は、エコーガイド穿刺が 総合診療医の強みになると思ったからです。総合診療医でもブラインドの膝の関節注射などを行う場合はありますが、エコーガイド穿刺ができれば、整形外科医が行うような肘肩指の関節や首の腕神経叢なども穿刺しやすくなります。 

あとは本格的に研修を受けた際、指導してくれた検査技師の方が非常にほめ上手で、ものすごくやる気がアップしたというのもあります。

―― すでにエコーに関して、講演活動や執筆もされていますよね。

診療にエコーを活用することは、決して珍しくありません。ですが、エコーに関する知見の発表や共有は意外とされていないんです。 あとは、私は「ここにエコーを当てたらどうなるんだろう?」と思った時、患者さんに有益だと判断したら積極的に活用するようにしています。そして、こうやって使ってみたら便利だった、エコーで可視化したらこういうことが分かったと、積極的に発信するようにしています。

発信する人が少ないこと、エコーの新たな活用方法を見つけて発信していることで、 執筆や講演の仕事が舞い込んできているのだと思います。この点も、私にとってのやりがいになっています。

エコーを使うことで、 それまで臨床現場で分からなかったことの答えがすぐ見つかることが多々あります 。例えば点滴で腫れた時、 血管が弱いからだと言われることがありますが、エコーを当ててみたら末梢静脈に血栓ができていたことがありました。他にも、長年整形外科でレントゲンを撮って異常なしと言われ続けていたものの、ずっと一箇所だけ腫れていた患者さんの親指にエコーを当ててみると、木のトゲが隠れていたこともありました。

エコーは、患者さんともその場で結果を共有できるので、患者さんの満足度も上がりますし、臨床のちょっとした疑問にすぐに答えを出してくれる画像デバイスだと思います。

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医師プロフィール

植村 和平  総合診療医

北海道出身。20217年、自治医科大学医学部を卒業。砂川市立病院(北海道砂川市)で初期研修を修了後、2019年4月より、北海道家庭医療学センター総合診療専門医プログラム専攻医。エコーに関して学会での発表や、講演、執筆など精力的に取り組んでいる。
業績:www.linkedin.com/in/wahei-peace-uemura

植村 和平 
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