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医系技官として持続可能な医療制度をつくりたい

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医系技官として、まもなく6年目を迎える望月七生先生。国際貢献への思いを胸に医師を目指すなかで、医系技官の道へ進んだきっかけとは? 厚生労働省や環境省でさまざまな経験を積みながら、理想の医療制度の実現に力を注ぐ望月先生に、その思いを伺いました。

◆国全体を見ながら、あるべき医療について議論

―現在の取り組みと、医系技官というお仕事について教えてください。

厚生労働省の保険局医療課に所属し、診療報酬の改定に取り組んでいます。診療報酬は2年ごとに改定するため、現在は令和4年度の改定に向けて、どういった点を盛り込むか検討しているところです。

厚生労働省の中で政策を練ると、それがそのまま実現できるというわけではなく、想像以上にたくさんの関係者との調整が必要になってきます。病院や医療関係団体等を見ても、たとえばメインで提供している診療が急性期か慢性期だけでも立場は異なってきます。

そういったさまざまな関係者と調整をして、どういう解決策が1番最適かを見極めていくのが、医系技官の大切な仕事の1つです。実は、入省するまでこの調整の大変さはあまり分かっていませんでしたね。

―医系技官として、特にやりがいを感じるのはどのような部分ですか?

医系技官は2年に1度異動があるので、1つにとどまらず、いろいろな分野を経験できます。そのため医療関係者だけではなく、全く違う分野の方とも「そもそも医療とはどうあるべきか」について議論ができる。これが大きな魅力です。

私は社会全体を見ながら仕事をしたいと思って医系技官になる道を選んだので、さまざまな立場の方と接しながら仕事ができる経験にとてもやりがいを感じています。

◆医療制度が充実すれば、より多くの人を救える

―医系技官に興味を持たれたきっかけを教えてください。

幼少期に途上国に住んでいたことから、もともと国際貢献に興味がありました。国際貢献といってもさまざまな分野がありますが、どんな人にとっても不可欠なものは医療だと感じて、医師を目指し始めました。

医学生になってから、日本人医師がボランティアで医療を提供しているネパールの地方を見学する機会がありました。そこで個々の取り組みの重要性を実感するとともに、制度として取り組めばより多くの方に貢献できるのではないかと、医療制度に興味を持つようになったんです。

そのとき初めて、厚生労働省で医師として医療制度に関わる道があることを知り、医学部5年生のときに医系技官の説明会に参加してみたのです。

―臨床医と医系技官、どちらを選ぶかで迷いはありませんでしたか?

医学部卒業時点では、臨床医と医系技官、両方の選択肢が自分の中にあったので、まずはしっかりと臨床現場の基礎を身につけようという気持ちで初期研修を受けました。そして、後期研修をどうするかという進路の選択が近づいてきたころ、医系技官を目指すことに決めました。2年の研修期間中に、医療制度から取り組まなければ解決が簡単ではないという課題を感じ始めたからです。

とはいえ、臨床もとても面白かったので、相当迷ったのも事実です。厚生労働省に入省すると、どうしても患者さんから離れてしまい、医師として実際に一人の患者さんと関わることからも離れてしまいますから。

ただ、医系技官になる選択肢が自分の中でずっと薄れなかったので、まずはなってみて、何か違和感を感じたらその段階で臨床医に戻ればいい。そう思って、厚生労働省の試験を受けることにしました。

―医系技官になられてからのキャリアについて教えてください。

最初に配属されたのは、厚生労働省の中で、国際関係の案件を取りまとめる国際課というところです。WHOの国際会議に毎年出席して、日本を代表して意見を述べるというのがメインの仕事でした。世界全体として国際保健をどういう方向性に進めるべきか、そもそも医療とはどうあるべきかといった議論の場に参加できるのは、とてもやりがいがありました。

一方で、日本の複雑な医療制度をどう発信するかは難しいところでした。日本の医療制度の優れた点について、知見の共有を求められる場面が多かったのですが、医療制度というのは基本的にそれぞれの国で全く異なる部分も多いものです。そのため、日本の医療制度を誤解なく伝えることには、いつも悩まされましたね。

国際課のあとは、環境省に出向しました。

―環境省ではどのようなお仕事をされていたのですか?

環境保健という分野を扱ってるところが環境省の中にあり、多くの医系技官が出向しているのですが、私はその中で主に熱中症対策を担当していました。さまざまな環境で発症し得る熱中症を予防するために、自治体や民間企業、他省庁とともに普及啓発に取り組んでいましたね。

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医師プロフィール

望月 七生 医系技官

厚生労働省保険局医療課
2015年鹿児島大学医学部卒業。麻生飯塚病院で初期臨床研修を修了後、厚生労働省に入省。大臣官房国際課に所属。2019年に環境省大臣官房環境保健部環境安全課へ出向し、環境保健の中でも熱中症の普及啓蒙活動に取り組む。2021年4月より厚生労働省保険局医療課にて、診療報酬改定に携わっている。

望月 七生
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