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手に先天疾患があるからこそ、その専門医になる

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医師4年目の小林樹先生は、左手に先天異常がありながらも整形外科医として研鑽を積んでいます。整形外科医の道を進むかどうか悩んだ時期もあったそうですが、整形外科医の道を歩むことにした背景には一貫した想いがありました。

◆手の先天異常があるから整形外科医になった

―医師を目指した理由を教えていただけますか?

私は左手に先天異常があり、母指と短い小指しかなく、示指、中指、環指がありません。小児期に整形外科で指を延長する手術と角度をつけて機能を上げる手術をしていただきました。その時の主治医の先生に感謝と尊敬の念を持ちながら育ち、物心ついた頃から整形外科の医師になりたいと思っていました。

―では医学部入学後も、診療科に迷うことはなかったのですか?

整形外科医になりたいけれど本当になれるのか、という点は多少悩みました。自分の気合だけでどうにかできるものではないですから。病棟実習に出て実際の診療の現場をみてからは、患者さんの役に立ち、かつハンディキャップが減るであろう手技の少ない診療科に進んだ方がいいのでは、と考えることもありました。

また外科系診療科の実習の際は、例えば心臓血管外科だと、「人工心肺を使用するため手術時間の制限があり、その点がハンディになるかもしれない」と言われたり、反対に消化器外科では、「腹腔鏡なら、器械さえ持てえしまえば、指が2本の人でも5本の人でも同じ」と言われたり――。ただ、さまざまな診療科を見て先生方にお話を伺ううちに、元々の志望であった整形外科に進みたいと強く思うようになり、現在所属している千葉大学整形外科の先生方にお会いしたことで、整形外科医として歩もうと決めることができました。

―その決定打は何だったのですか?

大学卒業後は、出身の千葉県で働きたいと考えていました。3日間の日程で千葉大学の整形外科を見学させていただいた時、2日目に手を専門にされている松浦佑介先生が、手のことを気付かれました。その時に「このような事情があるのですが、整形外科医になりたいです」とご相談させていただいたところ、「いくらでも工夫はできるから、何とかなるよ」と言って下さいました。

その見学の際、すぐに業者の方を呼んでいただき、左手で扱える鑷子など鋼製小物、左手の形に合ったグローブの製作を始めてくださいました。この時に、志望通り整形外科医になろうと決意しました。オーダーメイド鑷子は、約1年かけて試行錯誤を繰り返し、私が大学6年生の3月に完成し、翌月の初期研修開始時から使用しています。滅菌・未滅菌のカスタムメイドグローブも昨年完成し、診療で使用しています。

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医師プロフィール

小林 樹 整形外科専攻医

千葉県出身。2016年浜松医科大学卒業。墨東病院、千葉大学医学部附属病院にて初期研修を修了後、2018年4月から同病院整形外科に入局。現在は、さんむ医療センターに勤める。

小林 樹
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