進化する脳梗塞治療[2] 脳梗塞はどう治療するのか?
記事
患者 脳梗塞のうち、血管が狭くなって起こる「血栓性梗塞」は、どのように治療するのですか?
医師 狭くなった血管を広げることで、治療することができます。心臓のカテーテル治療では、バルーンという風船やステントという管を入れて血管を広げます。しかし頭の中の血管の場合は、心臓の血管とは構造が異なるところがあるので、同じ要領で膨らませたり、ステントを入れたりすると問題が生じることがあります。
頭の血管に入れるステントとしてウイングスパン(Wingspan)が開発されました。頭の血管が狭くなった患者さんにおいて、このステントを入れる治療と薬や生活習慣の改善による治療との比較が行われましたが、厳密には薬だけの治療と比べて良い結果を出せていないのが現状です。そのため、治療における位置づけとしては発展途上と考えるべきです。
患者 血液の流れが淀み、血の塊が頭の血管に詰まる「塞栓性梗塞」の治療はどのように進化していますか?
医師 予防に関する内服薬においても大きく進歩していますし、実際に脳梗塞が起こってしまった場合における治療もドラスティックに変化しています。
脳梗塞が起こり早期に病院へ搬送された場合、基準を満たす患者さんにはt-PAという血栓溶解薬による治療が、日本においても2005年10月から始まりました。当初は発症から3時間以内が治療の対象でしたが、2012年9月に時間の制約が4.5時間まで拡大されました。しかし、t-PAという治療は万能選手でなく解決困難な課題を含む治療でもあります。
患者 それはどんな課題なのでしょうか。
医師 ザックリした表現をするならば、時間の制限などによってt-PAを使えない場合が一定の頻度で生じることが一つ、そのほかにも太刀打ちできない場合が多く発生することです。
医師プロフィール
内田 賢一 脳神経外科
中東遠総合医療センター 脳神経外科部長
2002年福井医科大学卒業、東京警察病院、福井赤十字病院などを経て現職。
趣味はトライアスロン、登山など。神奈川県藤沢市出身。