豪州ベテラン医師も招集! 日本の離島へき地医のための手技強化WS
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離島へき地で闘える総合診療医を育てる「Rural Generalist Program Japan(以下RGPJ)」では、世界のへき地医療をリードするオーストラリアに習い、年2回の手技強化を目的としたワークショップを開催しています。このワークショップは、国内各地の離島やへき地の病院でトレーニングする研修生が、日常の診療で遭遇しにくい分野の知識・手技を集中的に強化すると同時に、同期との交流を通して学び合うことを趣旨としています。
第1回目は、RGPJ研修病院の一つである千葉県銚子市の島田総合病院の診療室や手術室を舞台に、オーストラリアへき地医師会会長―Ewen McPhee先生と日本各地のベテラン指導陣を迎えて二日間にわたって行われました。眼科、循環器内科、整形外科、産婦人科、麻酔科、エコーの6つの実技にフォーカスを絞り、臨床に即した指導が行われました。ベテラン指導医陣の熱気ある指導に応えるべく、研修生側も必死に勉強している姿が印象的でした。
ワークショップの様子:http://genepro.org/blog/2017/07/17/post-2598/
そして各セッションでは、オーストラリア・クィーンズランド州のへき地・エメラルドで30年近く地域医療を支えてきたEwen McPhee先生の手ほどきやコメントを直接いただくことができました。RGPJがまだ誕生する前から力強くサポートしていただき、今回も真っ先に駆けつけてくださいました。穏やかで、時折混ぜる何気ないユーモアで周りをホッとさせてくれるEwen先生から、ワークショップの感想を綴ったお便りが送られてきました。オーストラリアのへき地専門医が、日本の関東最東端で過ごした週末をお届けします。
(Ewen McPhee先生の便り)
Ewen先生のブログ:https://ruralgp.net/2017/07/17/a-weekend-of-firsts-in-japan/
“A weekend of firsts in Japan”
「初めてづくしの週末」を日本で過ごして
まずは、今回オーストラリアへき地医療学会(ACRRM)、およびオーストラリアへき地医師会(RDAA)の支援の下、無事に “初めてづくし” のワークショップを開催し終えた齋藤学医師はじめ、関係者の皆様に賛辞を贈りたいと思います。
今回のワークショップは、「Rural Generalist Program Japan(RGPJ)」に初の研修生として名乗りを上げた6人の “先駆者” に向けたものであり、麻酔科医や産婦人科医、外科医、循環器内科医、整形外科医にエコー専門技師など、多くの専門家によるサポートによって実現されました。
さて、“First(=初めてのこと)” に彩られたワークショップにおいて、私はいくつもの “First” に触れましたが、「それぞれの研修生に対して、医療的なフィードバックのみならず、英会話に対するフィードバックがなされた」ことは、そのうちの1つです。
この ”First” について語る上で、英語教師として素晴らしい役割を演じたジャスミン・ミルマンの存在は外せません。英語教師であると同時に、栄養士でもあるジャスミンは現在、琉球大学にて博士号を取得するべく、『長寿の秘訣となっている可能性のある腸内細菌学』について研究しています。
今回、“日本版Rural Generalist Program” を情熱的にサポートする彼女と出会えたことを、同じオーストラリア人として嬉しく思いました。
そして、ワークショップを通じて、指導者や島田総合病院のスタッフ、プログラムを支援する方々、さらには見学に訪れた未来のへき地医療を担う若い医師たちと交流できたこと。
これもまた、もう1つの “First” であったと言えます。
夜の交流会では指導医と研修生が腹を割って語り合う時間が設けられました。指導者たちは、医師として歩んだ自身の歴史や、将来に向けた願望などについて語ってくれましたが、仕事と生活とのバランスの取り方や、医療における女性医師の立場から、医療以外に人生で達成したい目標に至るまで、その内容はどれもユニークでわくわくさせられるものばかりでした。
「へき地医療」に情熱を傾けること。そして、離島の方々に医療を届けることの重要性は、もはや言うに及ばないでしょう。
多くの方々を巻き込みスタートしたこのプログラムからは、私自身、大きな刺激を受けることができましたし、またこの心躍る新たな取り組みに関わることができたことを、とても光栄に思います。
“A weekend of firsts in Japan”
Kudos to Manabu Saito for the many firsts in his Rural Generalist Workshop supported by the Australian College of Rural and Remote Medicine. In a move that is new to Japan Dr Saito ran a workshop for six Vanguard Rural Generalists of the Japanese Rural Generalist Program, with Specialists in Anaesthetics, Obstetrics, Surgery, Cardiology, Orthopaedics and Radiology, running sessions on clinical skill building and exposure to cross discipline knowledge.
Medical knowledge was coupled with feedback and performance improvement, another first for the Registrars as their supervisors gave them personal feedback not only in medical knowledge but also their evolving use of the English language with the very excellent Jasmine Millman.
Jasmine is a Dietician, English teacher and Ph.D. Student living on Okinawa researching gut microbial biomes as a possible key to the longevity of Japanese people’s lives. It was a pleasure to meet another Australian passionately supporting the Rural Generalist program.
An evening of social interaction between supervisors, hospital staff, support people and observing doctors (possible future rural generalists) was another first, with the Supervisors put under the spotlight to talk about their history and their aspirations.
Conversations about work-life balance, women in medicine and life outside medicine to create a sustainable lifelong career, were unique and refreshing.
The enthusiasm for rural generalist medicine and delivery of services to island people was palpable. The commitment of many people to making this new program is inspiring. I am humbled to be associated with this exciting initiative.
医師プロフィール
齋藤 学 救急科
合同会社ゲネプロ
2000年順天堂大学医学部を卒業、千葉県国保旭中央病院にて研修。2003年から沖縄県の浦添総合病院、鹿児島県徳之島徳洲会病院などに勤務し、2015年合同会社ゲネプロを設立、代表に就任する。2017年4月から「日本版離島へき地プログラム」をスタートさせた。
ゲネプロ http://genepro.org/rgpj/
Ewen McPhee
オーストラリアへき地医師会(Rural Doctors Association of Australia) 会長。
オーストラリアのクイーンズランド州、エメラルド(Emerald)というへき地で、30年近くへき地総合診療医(Rural GP)、総合診療産婦人科医(GP Obstetrician)として地域医療に従事。2015年8月にゲネプロ主催のワークショップの指導医として来日し、福岡、徳之島での講演では好評を博した。趣味は自家用飛行機でツーリングに行くこと。