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たった35%の病児保育利用率を上げたい

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医師11年目の園田正樹先生は2017年7月、病児保育の課題を解決するべく起業を決断しました。病児保育の課題とは? 起業に至る経緯とともに伺いました。

◆病児保育施設の利用率はたったの35%!?

―今取り組んでいることについて教えていただけますか?

2017年7月にCI Inc.を創業。現在は、ITを使って病児保育施設の提供側と利用者側をマッチングさせるオンラインサービスを開発しています。

子どもの病気は親、特に母親の就労に大きく影響を与えます。子どもが病気のときでも働けるために病児保育施設があるのですが、いつも満室で預けられない、電話予約をしたいのに電話が全然つながらないなどの理由から、使いたいときに使えず結局母親が仕事を休まなければいけない問題があります。

この問題を解消するために、利用者と病児保育施設とをマッチングさせるサービスの開発を始めました。

―起業を決意した背景にある課題感を、もう少し具体的に教えていただけますか?

病児保育施設は現在、各自治体からの委託業務として民間組織が運営していて、全国に約1,700施設あり、毎年100施設以上増えています。ところが、お母さんたちが利用したいときに利用できない状況です。このギャップにはいくつかの要因があります。

1つは、そもそも近所の病児保育施設を把握する手段が限られ、病児保育施設が正しく認知されていないこと。お母さんたちへのヒアリングをしてみて、「私の家の近くにも病児保育施設があったんだ」と気付かれるお母さんが多かったです。

2つ目は利用率の低さです。電話が全然つながらないし、つながったとしても満室と断られることが多く、需要に対して供給数が足りていないのかと思いきや、実はたったの35%しか利用されていないのです。利用率の低さの原因はシステムにあります。

◆病児保育施設の課題

―現在のシステムは一体どうなっているのですか?

まず子どもが熱を出したり、病気にかかったりして保育園へ預けられないことが分かると、お母さんは病児保育施設を使おうと、出勤前の時間に、施設に電話をかけます。ところが施設の電話はずっと通話中でつながらない。仮につながったとしても、その施設が満室だった場合、また別の施設への電話を試みなければなりません。多くの場合、トライしても空いている施設が見つからなかった経験を3回くらいすると、以後の利用を諦めてしまいます。

一方、施設側は何をしているかというと、当然、利用予約のためにかかってきた電話に対応しています。電話をとってから子どもの名前を聞き、ファイルからその子どもの情報を探します。そのうえで、今回の利用に必要な情報を聞き、その子どもを受け入れられるか確認する、という作業を行うのです。

また、当日キャンセルもあります。なぜなら子どもの病気がいつ治るか定かではないので病気になったら一定期間の予約を取るからです。しかし治れば保育園に預けられるので、保育園に行けることが分かった朝にキャンセルが発生するのです。キャンセルの30%が当日キャンセルです。

このように予約もキャンセルも全てを電話、もしくはFAXで行っています。そして電話予約は大体1回当たり5〜10分かかります。ところが、電話が1回線しかない施設も多くあるのです。1回線しかなかったら、30分の間に対応できる人数は、せいぜい3〜6人程度。利用予約もキャンセルも、お母さんたちは自分の出勤前に電話をかけるので、電話が集中する時間は大体決まってきます。そのときに利用者数に対して回線が少なければ、当然お母さんたちからすると「何度かけてもつながらない」という状態になりますし、対応できる数が少ないので施設側も利用率をなかなか上げられません。

さらに、感染力の強いインフルエンザや水疱瘡などは隔離対応が義務付けられているので、隔離が可能な部屋(隔離対応部屋)が1つしかない施設の場合、仮に水疱瘡の子どもを1人受け入れていると、その施設ではインフルエンザの子どもは受け入れられません。例えば、地域に3つある施設のうち2つに、それぞれ水疱瘡の子どもが1人ずつ預けられていたら――。インフルエンザの子どもを受け入れられるのは残り1施設の隔離対応部屋のみです。

このようなシステムで動いているので、利用率が上がらずお母さんたちからは不満が出ていて、施設側は経営に苦慮し、閉鎖に追い込まれることもあり、さらに需要にたいする供給数が減ってしまうという悪循環になります。

もちろん、中には利用率100%の施設もあります。そんな施設では、8時半から預かり開始1時間半前の午前7時にスタッフが出勤、その日利用予定の全家庭に電話をかけてキャンセルはないか聞いていきます。当日キャンセル数が分かったら今度はキャンセル待ちの家庭に連絡、「キャンセルが出ましたが利用しますか?」と1件1件聞いていくのです。スタッフがここまで努力しないと利用率100%は達成できない。非常に非効率です。

―このような問題を、どんなオンラインサービスで解決しようとしているのですか?

私たちが開発しているシステムでは、お母さんたちがオンライン上で複数施設に第一希望、第二希望、第三希望と優先順位をつけて予約します。優先順位がついているので、例えば第一希望の施設が満室で第二希望の施設に空きがあれば、予約をした時点で第二希望の施設の利用が確定する。当然キャンセルもオンライン上で簡単にできます。

また予約時の問診に人工知能を導入して、隔離の必要がある症状の子どもを抽出、その子どもたちは同じ施設にまとめ、隔離対応部屋を有効活用することで、各施設の利用率を上げるところまで踏み込んでいます。人工知能の精度を高めるのには、自分の医師として知見が役立つと考えていますし、そこがサービスの強みになると考えています。

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医師プロフィール

園田 正樹 産婦人科

CI Inc. Founder / CEO
新潟県出身。2008年佐賀大学医学部を卒業、自治医科大学附属病院にて初期研修を修了、東京大学医学部附属病院産婦人科教室に入局。都内や長野県の病院で産婦人科医としての研鑽を積み、2017年にCI Inc.を創業。同社は、2018年6月にASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)アクセラレーションプログラム採択、2018年9月にキッズデザイン賞 奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)受賞している。

園田 正樹
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