coFFee doctors – 記事記事

北海道に総合内科の後継者が育つ拠点をつくりたい

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 1
  • 2

記事

医師8年目、総合内科医の小澤労先生は、2017年より栃木医療センターの内科で、チームリーダーとしてマネジメントに携わり、後期研修医の教育にも尽力しています。そして将来は「北海道に総合内科の拠点をつくりたい」と考えています。故郷北海道への強い思いがありながら、なぜ今は関東の病院にいるのでしょうか。そして、なぜ北海道に総合内科の拠点が必要なのでしょうか。現在に至る経緯と今後について、お話を聞きました。

◆総合内科でマネジメントに関わる

—現在の先生の役割をお聞かせください。

栃木医療センターの内科は、主に消化器内科、循環器内科、総合内科のスタッフの先生と後期研修で組まれた医師6~7人1グループで患者さんの診療をします。私は今年4月よりそのチームリーダーとして、マネジメントもするようになりました。さらに、後期研修医の勉強に関するマネジメントにも関わっています。

─チームや後期研修のマネジメントに関わるようになり、変化はありましたか?

非常に楽しく、張り合いを感じています。これまでは、患者さんだけを診ていれば良かったですが、例えば後期研修医と一緒に診るとなると、彼らのフィルターを通して患者さんを診ることも。後期研修医の思考に合わせて、考える時間を与えたりするので、時間はかかります。しかし「だから大変だ」と思ったことはありません。

患者さんの安全を担保した上で、どのように後期研修の診療をするか。後期研修の肉体的、精神的な負荷をどうケアし、どうフィードバックするか。患者さん以外も含めたところにまで視野が広がるのは新鮮です。

もともと2017年に栃木医療センターにきた時も、後期研修医の教育を担当したいと希望をしていました。これまではタイミング的にそれが叶わずにいたので、今は「ようやく自分のやりたかったことが始まったのだ」と手ごたえを感じています。

◆不安を乗り越え、北海道外で学ぶ決意

―総合内科医を志したきっかけを教えていただけますか?

思春期真っ只中の高校生の頃に、自分自身の心の動きに興味を持ち、精神科医を志して地元の札幌医科大学へ進学しました。大学6年の実習で、精神科や児童精神を行うクリニックを見学するうちに、当時の児童精神医療は職人気質な部分があり、経験豊富な先生の背中をみて学ぶ傾向が強い分野だと分かりました。これは、自分には難しいと感じたんです。

この頃は、国家試験の勉強をしている時期でもありました。どの分野の勉強も非常に楽しく取り組むことができ、精神科医となった途端にこれらの知識を捨ててしまうのはあまりにも惜しい。何でも勉強できる科があれば、と思うようになったのです。

大学の地域実習で総合診療医、家庭医として活躍されてる先生方の知識の広さに触れる機会もあり、感銘を受け、総合内科を目指すようになりました。

江別市立病院は、北海道内では数少ない総合内科をもつ病院です。後期研修で北海道を出たのは、江別市立病院の指導医の先生に憧れたことがかなり大きかったです。その先生は後期研修を京都の音羽病院で終え、北海道で指導医をされていました。その姿を見て、「北海道内だけでなく外で学び、持ち帰ってきたほうが将来の北海道のためになるんじゃないか」と思ったのです。

色々な先生と話す中で「今一番熱いのは長野だ」と聞いていたこと、そして、江別市立病院時代の上司が、諏訪中央病院の佐藤泰吾先生をご紹介くださったことが縁となり、諏訪中央病院に行くことになりました。

─北海道を出ることに不安などはありませんでしたか?

不安もあり、劣等感もありました。私自身がそうだったように、北海道の医学生の多くは、北海道外の有名病院にいくことに対し、「勉強についていけるだろうか」という不安を持っていると思います。

私は色々な方に相談に乗っていただきました。音羽病院から戻られた先生にも相談したところ、「外に出たらこんな世界が広がっているよ」「自分も不安だった」と話くださったのです。おかげで、不安を感じるのは自然なことだと考えられるようになりました。

自分がなりたい医師になるためには必要なことだと気持ちを固め、留学するくらいの決意で北海道を出ました。諏訪中央病院の後、家庭医療のプログラムにのっとっていくつかの病院で経験を積ませていただき、2017年から現在の栃木地域医療センターに所属しています。

─キャリアパスに一番悩んだのはいつ頃ですか?

1番悩んだのは医学生の頃ですね。北海道内で総合内科を学びたくてもロールモデルが見つからず、家庭医との違いもわからない。どこで学べるのかもわからない。情報が少なすぎたのです。

一方初期研修の時点では、すでに「北海道のために総合内科に尽くす医師になろう」と決めていたのであまり悩むことはありませんでした。

  • 1
  • 2

医師プロフィール

小澤 労 家庭医療専門医

北海道出身。2012年、札幌医科大学を卒業後、江別市立病院で初期研修修了。2014年より諏訪中央病院、練馬光が丘病院、六ヶ所村医療センター、東京ベイ・浦安市川医療センターを経て、2017年4月より国立病院機構栃木医療センターに赴任。2019年4月より内科チームリーダーを務める。

小澤 労
↑