進化する脳梗塞治療[3] t-PAが使えない場合の治療法は?
記事
患者 t-PAという治療の対象にならない患者さんは、他に治療法はないのでしょうか。
医師 t-PAの有効性を調べる研究で、発症から4.5時間以内に治療を行うことの正当性は、担保されています。しかし時間内に病院に運ばれてくる患者さんは、現実には極めて少数です。ある研究によれば、発症3時間以内に搬送されt-PA治療の対象となる脳梗塞患者さんは、2%とされています。
こうした時間的制約を延ばすことができないかという仮説に対して、カテーテルを用いた治療による研究から、時間切れの患者さんにも治療のチャンスが生まれる可能性があることがわかり、それ以降の臨床試験に大きな影響を与えました。
いずれにしても脳梗塞の治療において時間がとても大切なことに変わりはありません。「手足の動きが悪いので様子をみていたけど、全然よくならないから病院に来ました」というのではなく、おかしいと感じたら速やかに医療機関を受診してください。眠れる森の美女が目を覚ますには、時間が限られているのです。
患者 そのほかにはどのような治療が行われているのですか?
医師 大血管の閉塞などに関しては、静脈から血栓を溶かす薬を投与するだけでは、血栓を溶かすのが難しい場合も多くあります。こうした病態の多くは「塞栓性梗塞」であり、不整脈などで生じた血栓が大血管を閉塞するものです。
大きな血管を閉塞した場合、重症型へ移行し、死に至ることがあります。閉塞した血管を再開通させなければ、歩いて自宅には帰れないということです。
こうした「塞栓性梗塞」に対しては、カテーテルを使って血栓を取り除く治療があります。針金にからめて血栓を取り除く器具や掃除機のように血栓を吸い取る器具も登場し、「塞栓性梗塞」に対する治療は新しいパラダイムへ入っています。
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医師プロフィール
内田 賢一 脳神経外科
中東遠総合医療センター 脳神経外科部長
2002年福井医科大学卒業、東京警察病院、福井赤十字病院などを経て現職。
趣味はトライアスロン、登山など。神奈川県藤沢市出身。