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千葉県の小規模病院で、地域の患者さんを支えたい

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医師7年目の村山愛先生。村山先生は学生時代に家庭医を志し、千葉県内の勤務先で自ら家庭医療研修プログラムを立ち上げました。村山先生は千葉県で家庭医として働くことで、どのようなことを実現していきたいと考えているのでしょうか。

◆家庭医を志したきっかけ

―家庭医を目指した理由を教えていただけますか?

明確に家庭医を志したのは、大学3年生の時でした。日本プライマリ・ケア連合学会が主催する「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」に参加したことがきっかけです。

私は自治医科大学に進学していたので、授業で地域医療の体験談を聴く機会が多かったのですが、夏期セミナーでは、それを体系的に学問化してくれるような感覚があり、衝撃を受けました。それまでは、地域医療の体験談を聴いたり、病院実習や見学をしたりしても、体系立った学びに落とし込むことができていなかったのだと思います。

その後、夏期セミナーで出会った先生のご厚意で、岐阜県の揖斐郡北西部地域医療センター久瀬診療所で実習させていただきました。その時にも実習するだけで終わらず、振り返りをすることで学びにつなげてくださり、自分も地域医療をきちんと体系立てて取り組みたいと思い、家庭医になることを決めました。

◆家庭医療後期研修プログラムを受けたい

―所属先の病院で家庭医療後期研修プログラムをつくってもらったと伺いました。

大学卒業後は、自治医科大学卒業生の受け入れ先の1つである国保直営総合病院君津中央病院で初期研修を修了し、3年目から2年間は地域派遣として、君津中央病院の分院である大佐和分院の内科に勤務していました。5年目に再び君津中央病院に戻ることになったのですが、ちょうど君津中央病院総合診療科の常勤医師が皆辞められることになり、総合診療科病棟を閉めることになってしまいました。

他の病院で家庭医療を学び専門医を取得することも考えたのですが、5年目に入るタイミングで娘の出産がありました。出産後の働き方を考えると一度勤務経験があって慣れている君津中央病院のほうが好ましいと思いました。ただ、君津中央病院では家庭医の専門医が取れなかったのですが、わたし自身は家庭医以外の専門医にはあまり興味がなく――。それならいっそのこと、家庭医療後期研修プログラムをつくってもらい、研修できる環境を作ろうと考えたのです。自分が先に家庭医専攻医としてプログラムを終えていれば、今後後輩たちが続きやすいとも考えました。

君津中央病院側には、無理を言ってプログラムをつくってもらったと思います。ただ、病院側も女性医師支援として時短勤務を利用しながらの復帰を歓迎してくれました。また私が専門医を取れていないことも気にしてくれていました。そして、自治医科大学卒業生の受け入れ先として、研修プログラムをつくる必要性を感じてくださっていたようです。

―研修を進めていくにあたって苦労はありませんでしたか?

まず自分で指導医の先生を探すところから始まりましたね。君津中央病院の地域医療センター長がプログラム責任者になってくださいました。他の診療科に、総合診療科以外のブロック研修を受けさせてほしいと依頼したり、研修でこういうことを学びたいと交渉したり――病院側ももちろん動いて下さいましたが、細かいところは自分で主張しなくてはいけなかったのは大変でした。

あとは、大変というより不安だったのが、小児科や救急科のブロック研修で、自分は家庭医療後期研修として適切な研修ができているのか、ということでした。

しかし、大学3年生で参加した夏期セミナーに、翌年以降もスタッフやサポート役として携わり続けていましたし、学会活動にも参加していました。そこで知り合った多くの家庭医の先生方や同世代の家庭医療専攻医に、定期的に振り返りの時間をつくってもらったり、こういうことを意識して勉強したらいいとアドバイスをもらったりしていました。また、院内の各科の指導医にも相談しながら研修を進めていくことができました。

小児科研修を終えた時、小児科の指導医に「家庭医の重要性がよく分かった。君が他の病院に行っても、僕が『家庭医療が学べるプログラムは必要だ。君津中央病院にあるべきだ』と守るよ」と言ってもらえたことは、とても嬉しかったですね。

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医師プロフィール

村山 愛 家庭医療専攻医

千葉県出身。自治医科大学を卒業後、国保直営総合病院君津中央病院にて初期研修、その後、同院や分院などで研鑚を積み、2018年4月より横芝光町立東陽病院に所属している。また、所属する医療機関で家庭医療後期研修プログラムを自ら立ち上げ、家庭医療専攻医として学びを続けている。

村山 愛
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