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チーフレジデントを制度化したい

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医師7年目の長崎一哉先生は、医師5年目でチーフレジデントを経験したことで、大きくキャリアパスを変えました。なぜキャリアパスを変更したのか、そしてどのようなことに挑戦しようとしているのか伺いました。

◆腫瘍内科志望から総合診療科に進んだわけ

―総合診療科で後期研修を受けるまでは、どのようなキャリアパスを思い描いていたのですか?

学生時代は血液内科の先生の指導のもと、がん患者さんを訪問したり患者団体へインタビューしたりしていたので、最初は血液内科に進みたいと考えていました。一方で、大学5年生になってからは臨床推論に興味を持ち勉強会を立ち上げる中で、総合診療科の先生がたに接する機会が増え、総合診療の面白さを感じるようになり、総合診療科にも目が向いていましたね。

そこで初期研修先は、名古屋市立大学血液内科の関連病院であり、非常に教育熱心な総合診療科の先生がいらっしゃった名古屋記念病院に決めました。研修を受ける中で、血液内科領域だけでなく、もっと広くがん領域に携わりたいと思うようになり腫瘍内科に進むことを決めました。

しかし腫瘍内科になるためには、まず他の診療科の先生方から絶対的な信頼を得られるくらいの内科スキルが不可欠だと考えていました。そこで、後期研修は総合診療科で受けることにしたのです。

研修先を水戸協同病院にしたのは、2年目の時に1週間、徳田安春先生について全国のJCHO系列の病院を回る機会がありました。その時水戸共同病院にも来ていて、総合診療科の人数が多く勢いがあり、レベルも高かったので魅了されたのです。それで水戸協同病院の総合診療科で後期研修を受けることに決めました。総合診療科で後期研修を受けたら腫瘍内科に進むつもりでした。

―総合診療医としてのキャリアを歩むことを決めたと伺っていますが、なぜキャリアパスの考えに変化があったのでしょうか?

大きな転機は5年目前半の半年に、チーフレジデントを務めたことでした。当科のチーフレジデントは医師5年目が半年間、当直以外臨床業務から一切外れて教育や研修医管理に専念します。レクチャーの準備や、外部講師として招聘する医師との折衝、または研修医の担当患者の割り振りや面談など幅広い業務がありました。医師の仕事は臨床業務だけでなく、やらなければいけないことが数多く存在していることを知りました。

私がチーフレジデントになった時期はちょうど当科の医師が減り、研修医が業務過多で悲鳴を上げていて、研修医の働き方改革にも着手しました。それの反響があり、学会で発表させていただき、医学界新聞にも掲載していただきました。また、今年度4月には臨床研修研究会にも呼んでいただきました。チーフレジデントの役割の大きさ、そしてニーズの高さを知った一方で、研修施設ごとにチーフレジデントの役割が異なったり、そもそもチーフレジデントを置いていない研修施設もあったり――チーフレジデント制度を整え、チーフレジデントの教育や必要なスキルを提供できる組織が必要だと感じるようになり、このまま総合診療科でキャリアを積んでいこうと決めました。

―チーフレジデント制度の整備をする組織設立の必要性を感じた背景の課題感を、もう少し詳しく教えていただけますか?

アメリカでは、1年間臨床業務から外れ1年間専任でチーフレジデントに従事します。また、チーフレジデントを経験したことはマネジメントができるということで、履歴書に記載ができるほど一目置かれる役職として認識されています。

一方日本では今言ったように、病院ごとにチーフレジデントの役割や業務内容がさまざまで、定義も統一されていません。そのため、チーフレジデントになった研修医はそれぞれ手探りで業務を進めざるを得ません。また、多くの病院のチーフレジデントは、臨床業務に加えてチーフレジデントとしての業務が加わっているので負担感が大きいです。そして、教育やマネジメント全てを担っているチーフレジデントはあまりいませんし、チーフレジデントを経験したことの評価を得る場がありません。

そして、研修医を代表して声を上げられる団体もありません。病院に勤務している医師20万人のうち4万人が研修医で、彼らの声を医療に反映することができれば、大きなパワーになります。

チーフレジデントの役割を明確化して質の向上と均質化を図るためにも、また、研修医の声を集めて発信するためにも、チーフレジデント制度の整備と取りまとめる組織の必要性を感じるようになりました。

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医師プロフィール

長崎 一哉 総合診療科

愛知県出身。2013年名古屋市立大学医学部を卒業後、名古屋記念病院にて初期研修修了。後期研修を水戸協同病院総合診療科にて修了。現在は、日本チーフレジデント協会(JACRA)設立に向けて活動している。

長崎 一哉
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