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INTERVIEW

東京大学医学部附属病院

形成外科・美容外科

荒木 淳

選択肢を広げる新しい移植医療

「フェイス/オフ」という映画をご覧になったことがあるでしょうか。犯罪者と彼を追う刑事が互いの顔を移植する、というお話です。映画の中の話と思われていたことが、現実にできるようになるかもしれません。
形成外科が専門の荒木淳先生に「新しい移植医療」についてお聞きしました。

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心に残った、褒められて悲しそうな女性の姿

形成外科医を目指したきっかけは何ですか?

私が研修医だった時のことです。19歳の若い女性が難病を患い、人工肛門(ストーマ)を造る手術を受けました。人工肛門とは、おなかから腸管を出して便を排泄できるようにした、便の出口です。

手術自体はうまくいきましたので、外科医やナースは「きれいなストーマですよ」と褒めていました。でも、そう言われた彼女の顔は全然晴れやかじゃない。当たり前ですよね。人工肛門にするとたまった排泄物を定期的に取り出さなければならないし、そのときは臭いもします。まだこれからという一番多感な時期です。病状は良くなったにもかかわらず、病院の陰で彼女が泣いている姿も目にしました。

当時は研修医で、患者さんの立場に近い感覚だったのもありますが、そのとき、医師の「患者から遠い感覚」に違和感を覚えました。そして彼女のような人のためにできることはないかと思い、外科の中でも新しい分野である形成外科医になることにしました。

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患者さんが選べる状態をつくる

形成外科ではどのようなことをしているのですか?

形成外科は主に「体の表面にある病気を治療する医療」です。外傷や腫瘍、生まれつきの病気などで起こった変形を治したり、失った体の一部や機能を新たにつくったりします。一般的には、「美容整形」と呼ばれているものも形成外科の一種です。

また、日本ではまだ行われていませんが、海外においては「移植」も形成外科の仕事です。例えば、事故などで顔に深い傷を負った人や手を失ってしまった人に、亡くなった方から顔や手を移植する手術も行われています。ほかにも生まれつき子宮のない女性や子宮がんで失った方に、亡くなった方の体から子宮を移植し、妊娠できるようにするといった手術も行われ、最近ニュースになりました。移植によって、男性でも妊娠できるようになる可能性は……まだ難しいと考えます。

しかし、このようなことが技術的にできるようになっても、やっていいのかどうか倫理的な面については常に考えなければなりません。移植には大きなリスクが伴うため、本当にやる必要はあるのかと反対する声も必ず出てきます。それでも、患者さんがどれだけ困っているか、それによってリスクとベネフィットを考えた上で選べる状態にしておくことは必要だと思っています。

○先天的に子宮がない患者から出産、世界初の閉経後ドナーからの移植
ロキタンスキー症候群(先天的に子宮がない)の36歳の女性が、61歳の閉経後のドナーから子宮移植を受ける。移植1年後に妊娠、その後から免疫抑制剤を開始し拒絶反応も出るが無事に出産。
http://www.thelancet.com./journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2814%2961728-1/abstract

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PROFILE

荒木 淳

東京大学医学部附属病院

荒木 淳

山梨大学医学部を卒業した後、みさと健和病院にて初期研修を修了後、東京大学医学部形成外科に入局し同附属病院に勤務。2011年 東京大学医学系研究科外科学専攻形成外科分野に入学。現在に至る。

 

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