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INTERVIEW

福島県立医科大学

家庭医

菅家 智史

医学生から専攻医までに接点を持つ

福島県内で家庭医療の教育に注力している菅家智史先生。過去には大学に出向き、医学生たちに家庭医療・総合診療の接点を持ってもらう取り組みもしていました。家庭医の普及・発展に力を注ぐ菅家先生が今の道に進んだ経緯、そして今後のキャリアについてお話しいただきました。

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医学生から専攻医までに接点を持ち、家庭医療を伝える

―現在の取り組みを教えていただけますか?

注力しているのは教育です。現在、週3日は大学に所属する教員として、家庭医療後期研修医や初期研修医、医学生の教育に携わっています。週2日は、喜多方市にある連携医療機関の喜多方市地域・家庭医療センターで研修している医学生や専攻医のもとに赴き、日常診療のフィードバックをはじめとした教育にあたっています。

地域・家庭医療学講座の総合診療専門プログラムでは、大学と地域が連携して研修環境を整備しています。大学が研修プログラムのコーディネートを担当し、喜多方市地域・家庭医療センターなど6つの医療機関では、「家庭医」としての能力を身に着けるための研修を提供する体制です。私は、研修プログラムのコーディネートと、現場での研修指導医の両方の役割を果たしています。現在、3名の専攻医がプログラムに在籍しています。

初期研修医は、福島県立医科大学に20名前後います。全員が地域・家庭医療学講座で研修を受けるわけではないので、関わる初期研修医は大体5~6人程ですね。医学生に関しては、1学年140人程度です。全員が1週間ずつ4つの診療所と病院に分かれて実習を行いますので、喜多方市地域・家庭医療センターには毎年、30人強の医学生が来ています。

―過去には、ジェネラリスト80大学行脚プロジェクトもされていたとか。

発起人は初期研修医時代同期で、今は筑波大学地域医療教育学准教授の吉本尚先生です。彼が日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部会の幹部を務めている時に、「総合診療や家庭医療に接点を持てていない医学生がたくさんいるから、自分たちから大学に押しかけていくプロジェクトをやったら面白そうじゃない?」と誘われたのです。それで私がプロジェクトの代表を務めることになりました。

当時から、日本プライマリ・ケア連合学会内で医学生向けの夏期セミナーを開催していましたが、夏休みに時間を割いてこのセミナーに参加するのは、非常に積極性の高い学生たち。そういう場に行くことには気が引けるけど、総合診療や家庭医療に漠然と興味を持っている医学生は一定数いるはずで、そのような医学生と接点を持つには自分たちから出向かなければいけないと考えていました。そこで同世代に声をかけたら30人ほど集まってくれ、ジェネラリスト80大学行脚プロジェクトは始まりました。

―具体的にはどのようなことをしていたのでしょうか?

ちょうど2018年、プライマリ・ケア連合学会誌に、私が代表を勤めていた時期の活動をまとめた研究結果を掲載しました。活動内容としては、大学構内で医学生が自主的に開催した勉強会に、行脚プロジェクトに賛同してくれた家庭医・総合診療医、あるいは賛同者のつながりのある医師を講師として出席したり、運営のサポートをしたりしていましたね。

参加者の心理的ハードルを低くするためにも、場所取りや参加者集めなど実務的な面でも、医学生主催であることが不可欠だと考えました。そのため夏期セミナーの参加者の中から、勉強会の発起人として一緒に取り組んでくれる医学生を探していきました。これが一番大変でしたね。

2011年から2015年の5年間、63大学で129回開催し、医学生はのべ2980人が参加しました。正直、行脚プロジェクトのおかげで変わったことを科学的に証明することは難しいと思っています。行脚プロジェクトを始めた時点と、今とを比較すると、明らかに家庭医や総合診療医の社会的認知度が上がっているからです。ただ、少なくとも約3000人の医学生に、家庭医療・総合診療に触れてもらい、認知の裾野は広げられたのではないかと思っています。

現在も行脚プロジェクトは続いていますが、ニーズが立ち上げ当初とはだいぶ異なってきています。後任のスタッフたちが、そのニーズをくみ取り続けてくれています。

「ジェネラリスト80大学行脚プロジェクト 立ち上げから5年間の歩み」 日本プライマリ・ケア連合学会誌 2018年41巻3号

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PROFILE

菅家 智史

福島県立医科大学

菅家 智史

福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座 講師
福島県出身。2004年、福島県立医科大学を卒業後、勤医協中央病院にて初期研修を修了し、総合内科研修を積む。2008年に母校地域・家庭医療学講座へ。

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