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INTERVIEW

岡山大学病院

産婦人科

牧 尉太

「子どもを産んでもいいな」と思える日本に

後期研修医時代の課題感から、大学発ベンチャー企業で産婦人科領域にデジタルシステムを導入し、妊産婦の緊急搬送時間を7分30秒短縮させた牧尉太先生。現在は岡山県吉備中央町が採用された内閣府の「デジタル田園健康特区」アーキテクトとして、産婦人科の枠を超え町全体のデジタル施策を進めています。さまざまな顔を持ち、いくつもの取り組みを進めている牧先生が思い描くゴールとは? また、そんな牧先生のキャリア観も併せて伺いました。

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「デジタル田園健康特区」で、デジタルを普及させるには?

―内閣府が進めるデジタル田園健康特区に指定された岡山県吉備中央町で、吉備中央町デジタル田園推進協議会アーキテクトを務められていますね。

コロナ禍で岡山県北の出生数は自治体によって2~4割減りましたし、医師の働き方改革の影響もあり、大学から地方へ医師を派遣することが難しくなる時代がやってくるので、周産期医療を集約化せざるを得ないだろうと考えていました。

そのことを2021年当時、副学長(現・学長)だった那須保友先生に相談しに行ったところ、吉備中央町がスーパーシティ型特区構想に応募しようとしていること、それに岡山大学として関わっていることを教えていただいたのです。私の実家はまさに吉備中央町で土地勘があることから、私も関わり始めたのが最初のきっかけです。

その後、吉備中央町には高速道路のインターチェンジがあるので、インターチェンジ直結で周産期や小児医療、救急に特化した病院があってもいいのではないかと、吉備中央町長に相談しに行く機会がありました。町長はすぐに賛成してくださり、大学側からは那須学長、私が主体的に関わり、こういったことも含め町長と計画立案。最終的にデジタル田園健康特区として国から採択を受けたのです。

実は、当初はさまざまな分野を網羅する計画案でした。しかし、国側のワーキングで助言もあり、医療分野に特化した内容で再度計画を策定していき、今後さらに大きな中山間地域での課題になってくる少子高齢化・人口減少に対応するモデル地区になってほしいとの期待からデジタル田園健康特区という枠組みを作り、採用されたとききました。

現在は救急医療、遠隔診療、母子保健・児童見守り、介護・高齢者見守り、買い物・地域ポイント、インクルーシブスクエアと、6つの事業領域に分けて、約10施策を進め、結果が出せるよう計画を進めています。

―進めていく過程では、どのようなことに留意されていますか?

住民のニーズを踏まえた事業を行うことが重要だということは、誰でも分かっています。ところが、国が年間200億円をデジタル田園都市国家構想に投入してもなかなか思うような成果はすぐには出ていません。

その理由は、特にデジタルの普及に関して言うと、住民のニーズは多少あるにしても、そこまで緊急的に必要としてないところにガラッと生活を変えるようなデジタルを導入しても、住民は「ほしい」と思わないから。住民は、生活を180度変えることを望んでいるわけではないんです。ですから、例えば普段、紙を使って行っていることをいきなりペーパーレス化にひっくり返すことは難しいんです。少しずつ進めていかなければならないですし、その過程にはさまざまな人海戦術が必要なのです。

この傾向は高齢者に限ったことではありません。どの世代にも当てはまります。多少不便は感じていても生活できているなら、そこにデジタルを導入したいという強いニーズは出てきません。そのため、今の生活に上乗せするような形でデジタルを導入すると、普段の生活に必要なかったものを強いられる感覚があるので使ってもらえないのです。

そのため、地域にどれだけ根ざしているものにするかという点には、意識的にかなり注力しています。あとは、どんな困りごとでもサポートが受けられるような仕組みづくりにも力を入れました。吉備中央町では「きびコンシェルジュなんでもサポーターズ」というオペレーターを配置し、人的リソースでデジタル普及を後押しする体制を構築したんです。

そして「きびコンシェルジュなんでもサポーターズアプリ(きびアプリ)」というアプリ版のサポートもあります。オペレーターのサポートのもときびアプリを使ってみたら便利だったからアプリ内の色々な機能を見てみると、「他にもこんな機能があるのか」とさらに興味が湧き、少しずつ使ってみる。そんな導線にしています。

開発は地場の企業に依頼しました。地域外の企業だと自治体の雰囲気を分からず開発するので、どうしても地域住民のニーズとの間に乖離が出てきます。また、毎日公民館でアプリの使い方を教えるなど、手取り足取り住民に教えることもできないからです。

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PROFILE

牧 尉太

岡山大学病院

牧 尉太

2011年3月金沢医科大学医学部医学科を卒業、恵寿総合病院で初期研修。2013年4月岡山大学病院産科婦人科に入局し、福井県立病院産婦人科、恵寿総合病院産婦人科で研鑽を積む。2015年4月岡山大学病院産科婦人科に帰局し、2019年4月同病院産科婦人科助教。2020年9月、岡山大学発ベンチャーそなえ株式会社設立発起人/研究主席アドバイザー就任。2022年4月より吉備中央町デジタル田園推進協議会アーキテクト/岡山大学病院デジタル田園健康プロジェクトプロジェクトマネージャーを務める。2022年9月、岡山大学病院産科婦人科産科病棟医長、2023年5月同大学病院産科婦人科講師に就任。

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