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INTERVIEW

株式会社クオトミー

代表取締役

大谷 隼一

医師の知見の偏りをなくしたい

大谷隼一先生は整形外科医として働きながら、株式会社クオトミーを創業。会社で開発しているプロダクトとしては、論文を読んだログを残すことで知見を共有・表現したり、ウェビナーや動画コンテンツで外科知見を共有し研鑽できたりする場をつくっています。「オンラインでの医師のコミュニケーションを可能にし、知見の偏りを埋めたい」と話す大谷先生。今に至るまでには、さまざまな挑戦と苦悩があったようです。これまでのキャリアと背景にある思いをじっくりと伺いました。

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◆オンラインで知見を共有し、医師の研鑽の場をつくる

ー株式会社クオトミーの事業について教えてください。

株式会社クオトミーでは、医師が医学的知見を醸成するオンラインプロダクト「Quotomy」と「Eventomy」を提供しています。

「Quotomy」では、読んだ論文についてログや意見を残すことで知見を表現・共有することができます。「Eventomy」は、点在しているWeb講演会や、オンライン学会などのイベントの情報をまとめています。専門性の近い医師がウェビナーやオンデマンドでイベント動画を見ながら、語り合えるような場をつくっています。

ーなぜそのようなプロダクトを開発しようと思ったのですか?

2015年にアメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校へ留学した時、医師を取り巻く環境に大きな差を感じたからです。

アメリカでは、論文での業績が上がると研究資金が手に入り、リサーチアシスタントや統計家を雇ったりでき、さらに業績を伸ばすことができる。そのような循環がありました。論文で結果を出すことで、研究資金が増える、社会的な地位が向上するといった、モチベーションを外発的に上げるシステムがありました。一方の日本では、論文を書こうとすると、忙しい臨床現場の合間をぬって、人的・資金的なサポートの少ない環境で個人が頑張らなければなりません。

私もそうでしたが、留学を終えた日本人医師の多くは後ろ髪引かれながら、時には憂鬱な気分になりながら帰国しています。その現実が悔しくて――。今お話したような環境の差を自分ではどうしようもないけど、日本の環境に適した別の方法があるのではないか。そう考えた私は、何かできることはないかと模索し、オンラインサービスを活用したら、日本人医師を取り巻く環境を変えられるのではと思い至ったのです。

ーどのような思考過程を経て、「Quotomy」や「Eventomy」という形になったのですか?

サンフランシスコは新しいオンラインサービスに対して寛容で、2015年当時、すでにUberという配車サービスが浸透していました。東京に比べると不便な点が多いサンフランシスコですが、オンラインサービスを利用することで生活が豊かになっていました。また、個人が表現や創作物を気軽に発信できる「note」や、ニュースにコメントができる「NewsPicks」から着想を得て、お題に対してコメントができるオンラインプロダクトにしたいと思い、完成したのが「Quotomy」です。

論文はニッチで難しいものですが、専門の医師からのコメントがあることで読みやすくなり、多角的な意見を知ることができます。自分自身が論文を読んだ後にコメントを残すことで、アウトプットし知識の整理に役立つ場にもできます。

その後、コロナ禍に突入すると、病院以外の場でコミュニケーションすることが難しくなり、何かオンラインコンテンツを媒介にして、医師同士がやりとりできることが求められていると感じました。そこで、それぞれがパソコンの前に1人で座っていたとしても、ウェビナーやオンデマンド動画を見ながら、コミュニケーションし合える場をつくりました。それが「Eventomy」です。

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PROFILE

大谷 隼一

株式会社クオトミー

大谷 隼一

整形外科医/株式会社クオトミー代表取締役
2005年名古屋市立大学医学部卒業。2008年東京大学医学部整形外科・脊椎外科学教室に入局。2015年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校へ留学。帰国後、JCHO東京新宿メディカルセンター、日本赤十字社医療センターで脊椎外科医として勤務。臨床業務と並行し、2017年12月、株式会社クオトミーを創業。現在も非常勤医師として現場に立つ。株式会社クオトミー会社情報:https://www.quotomy.co.jp/

 

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