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INTERVIEW

順天堂大学医学部眼科学講座

眼科

工藤 大介

「医師としてどう生きたいか」に焦点を

眼にけがを負った経験から、スポーツ眼科医になった工藤大介先生。日本スポーツ協会公認のスポーツドクターを務め、所属する順天堂大学医学部眼科学講座では、外来でアスリートを診療する傍ら、動体視力と眼球運動に着目し、いまだ解明されていないスポーツ時の視機能の研究を行っています。「スポーツと眼の関係に科学的根拠を見いだし、視覚面でアスリートをサポートしたい」と語る工藤先生に、研究への思いや、これまでのキャリアのこと、若手医師に望むことなどを伺いました。

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◆臨床も研究も全てはアスリートのために

―スポーツ眼科外来では、どのような診療を行っているのですか?

眼外傷の予防や治療、スポーツ選手のパフォーマンス向上のための視力矯正など、さまざまです。スポーツ愛好家から、国際大会に出場するようなアマチュアやプロの選手まで、患者さんが抱えるスポーツと眼に関する悩みに対応しています。

例えば、数十メートル先にあるわずか数センチの的を狙う射撃選手は視覚に関する感度が高く、普通の人が気付かないような乱視にとても敏感です。また、あるプロバスケットボール選手は、フィールドをよく見えるようにすると、電光掲示板の時計が見づらくなり、時計を見えるようにすると、フィールドが見えにくくなるため、調整が必要でした。

コンタクトレンズによる視力の矯正は、簡単にできるものではありません。練習や試合で、サイズや度数が少しずつ異なるレンズを試して、その中から自分に合ったレンズを選んでもらうなどして対応しています。

―視機能の研究には、どのような狙いがあるのですか?

スポーツを行う上で、動体視力や眼球運動などの視機能が果たす役割が大きいことは以前から指摘されています。しかし、どのような視機能がスポーツのどの部分に影響しているのかまでは、いまだ解明されていません。それが分かれば、視機能を高めるトレーニング法を開発し、選手のパフォーマンス向上に役立てることができます。

視機能の研究を始めたのは、10数年前の米国留学がきっかけでした。現地では早くから研究が行われ、視機能を高めるためのさまざまなトレーニングが実践されていましたが、見学してみると、そのトレーニング法に必ずしも科学的根拠がないことが分かりました。以来、スポーツと視覚の関係に科学的根拠を見出し、選手を視覚面からサポートしたいと、動体視力と眼球運動に着目して研究を続けています。

―視機能研究の手応えは得られてきていますか?

これまでスポーツ時の視機能は、①静止視力②縦方向動体視力③横方向動体視力④コントラスト感度⑤眼球運動⑥深視力⑦瞬間視⑧眼と手の協調性―の8項目から測定・評価されてきました。しかし、検査そのものの有用性が検証されたことはありませんでした。昨年、スポーツ健康科学研究科との共同研究で、その有用性を確認し、剣道選手に必要な視機能の評価が、静止視力・瞬間視・眼と手の協調性の3項目である、と明らかにできたのは収穫でした。

競技にはそれぞれ特性があり、求められる視機能は異なります。さらに研究が進めば、競技種目別に必要な検査項目を設定して、それに合わせた視機能トレーニング法を開発することも可能になるでしょう。本研究はその第一歩になったと思います。

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PROFILE

工藤 大介

順天堂大学医学部眼科学講座

工藤 大介

順天堂大学医学部眼科学講座 助教/博士(医学)/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1998年宮崎医科大学医学部(現・宮崎大学医学部)卒業。千葉大学医学部附属病院第二内科、帝京大学医学部附属市原病院(現・帝京ちば総合医療センター)麻酔科で研修後、2002年に順天堂大学医学部眼科学講座に入局。同大学医学部附属順天堂医院眼科助手、同練馬病院眼科助教、社会福祉法人賛育会病院眼科科長・管理医長を経て、2018年から順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科助教、外来医長。現在に至る。

 

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