INTERVIEW
地域を変えた若き医師の目指す夢
高校1年生の時にアメリカ同時多発テロ事件(9.11)が起きたことをきっかけに、「人の命を救う仕事がしたい。それは、自分が一生をかける価値がある」と考え医師を目指したという良雪先生。地域医療への取り組みのなかで、これまでに類を見ないサービスを提供し地域住民から大きな支持を受けています。そのユニークな発想はどこから来るのか、改革の手を止めないひとりの医師に話を伺いました。
三重大学を卒業した後、東京都立の病院で2年間勤務しました。その後地域医療に携わりたいという思いから、山梨県の病院に移り高齢者医療のありかたや地方における医療について学びながら勤務しました。山梨で働いていたときには地域のスーパーと協力して、栄養バランスの良い弁当を作り1日300個ほど販売しました。この弁当はとても好評をいただき、現在でもリニューアルされたものが売られているそうですよ。患者さんの健康管理や病気の予防について、病院に来ている間だけでできることには限りがあります。1日のうち1食でも栄養バランスの良い食事を取ることで、自分の体について考える習慣ができるのではないかと思ったのです。また、人口が減り元気がなくなっている商店街の一部を借りて、地域住民に対して健康について考えるカフェを開きました。
三重県に来ることになったきっかけは、松阪市の山中光茂市長から、深刻な状態にあった松阪市の救急医療への対応を手伝ってほしいというオファーを受けたからです。当時の松阪市は医療的に崩壊してしまっていて、休日や夜間に開いている市内で唯一の休日夜間応急診療所が、医師不足のために年間の休日のうち半分も閉鎖することになるというのです。本来であれば受診できるはずの近くにある診療所が閉まっていたら、すぐに治療すれば助かる命が救えなくなるかもしれない。近隣の市町村に患者が殺到してしまったり、救急車を呼ぶまでもない症状でも出動要請が増えてしまったりして、さらなる医療崩壊を招くかもしれないと考えました。そこで松阪の医療を守るために、若手の医師たちが集まったのです。
若手医師を中心として26名でチームを作り、平成26年4月にi-oh-J!を設立しました。休日夜間応急診療所で医師が不足している休日の診療について、i-oh-J!から医師を派遣することで診療所を閉めることなく継続しています。チームに参加してくれている有志の医師たちは、普段は三重県内や東京、大阪などで勤務している先生です。本来の業務を行いながら松阪に来ているので、医師を継続して確保しておくことも重要なミッションです。
PROFILE
一般社団法人 i-oh-j 代表理事
良雪 雅(りょうせつ まさし)
三重大学卒業後、東京都、山梨県などで一般内科医、総合診療医として勤務。医師不足によって救急体制が崩壊し、休日に一次救急に対応する医師が不在になった三重県松阪市で、山中光茂市長の呼びかけを受け、平成26年4月「一般社団法人i-oh-j(いおうじ)」を設立、代表理事に就任。
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