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INTERVIEW

はちのへファミリークリニック

家庭医

小倉 和也

現場発、地域全体を巻き込む

青森県八戸市で家庭医としてクリニックを運営している小倉和也先生。在宅医療に取り組む中で、多職種の連携不足が浮き彫りになってきたそうです。そこで取り組み始めたことは……?

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青森県のモデル事業を離れ、自主的な多職種連携へ

―現在、どのような活動をされているのでしょうか?

私は現在、家庭医として内科・小児科の外来診療を行いながら、約70名の方の在宅診療を行っています。そして、2015年秋に立ち上げた在宅診療における多職種連携コミュニティチーム「connect8」の事務局として活動しています。

connect8とは、八戸市で在宅診療の患者さんに関わる診療所や訪問看護ステーション、入所施設、居宅介護施設、薬局、歯科、総合病院などが参加するコミュニティチームです。「Mell+community」という患者情報共有のためのクラウドシステムを導入し、メンバー誰もが同一の患者情報を見られることでスムーズな多職種連携を図っています。八戸地域の住民の方が安心してこの地で暮らせることが目的です。そのため、医療機関の介入がなく現段階で介護サービスのみを受けている認知症の方や独居の方の情報も登録して、万が一医療的介入が必要になったときにすぐサポートできる仕組みにしています。

他職種事業開始
資料「多職種連携事業の開始」

登録者数は現在約600名、関わっているスタッフ数は300名を超えています。医療機関・施設の内訳は、当院を含めた在宅診療所3施設、総合病院3施設、歯科診療所10施設、訪問看護ステーション12施設、薬局17施設、ホームホスピス2施設、居宅介護支援関連施設22施設、その他介護サービス事業所36施設、合計105施設です。患者さんの情報共有のみならず、地域で行われる研修会や事例検討会の案内や、「認知症」や「小児医療」「法律」などのテーマに関して専門職の方に相談できる掲示板も設けています。

connect8
資料「『connect8』の参加事業所数

―なぜconnect8を立ち上げたのでしょうか?

もともと青森県の在宅医療多職種連携のモデル事業として当院や数件の訪問看護ステーションが連携して、情報共有の仕組みづくりを目指していたのです。しかし当然、他の診療所が診ている患者さんを、モデル事業に参加している訪看さんが担当している場合もあります。そのような患者さんの情報をさまざまな理由からモデル事業に組み込むことができませんでした。これでは八戸市が、本当の意味において安心して暮らせる街にならないと考えていました。

そこで2015年秋にモデル事業という形から離れて、現場主導でネットワークづくりを始めたのです。それがconnect8です。

具体的な連携の事例としては、精神科疾患(アルコール依存症)を合併したがん末期患者さんを診ている診療所がconnect8を活用して精神科医と連携できたため、緩和医療と精神科的治療を並行して進めることができ、在宅でお看取りまでできた例がありました。あるいは、小児麻痺のほか高血圧、喘息、認知症の症状がある独居の79歳の方の時には、診療所と薬剤師、訪問看護師やケアマネージャーが同じ患者情報を見ることができていたので、スムーズに訪問薬剤管理指導を行い状態を改善することができました。

また私のクリニックでは、小児の在宅医療にも取り組んでいます。難治性てんかんによって人工呼吸、経鼻経管栄養が必要となった13歳のお子さんは、感染症により入退院を繰り返したり、胃瘻造設を目的とした入院をしたり、リハビリのため通院が続いたりしています。小児の在宅医療にはケアマネージャーがいませんし、小児の場合はこのお子さんのように、入院してまた在宅医療に戻ることを繰り返すことが多いです。このような場合でも、connect8でいくつかの病院や訪問看護師と連携が取れています。

実際活用事例
資料「実際の活用事例(掲示板、意見交換)」

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PROFILE

小倉 和也

はちのへファミリークリニック

小倉 和也

はちのへファミリークリニック 院長
国際基督教大学在学中、短期留学先のカナダで家庭医の存在を知り目指すことを決意。同大学を卒業後、琉球大学医学部に入学。医学部卒業後は、北海道家庭医療学センターにて研修。弓削メディカルクリニックを経て、2010年にはちのへファミリークリニックを開業、現在に至る。

 

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