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INTERVIEW

下北沢病院

形成外科

菊池 守

日本にも「足病」という考えを根付かせたい

もともとは形成外科医として、乳房再建術をメインに10年以上のキャリアを積んできた菊池守先生。歯科医や皮膚科医のように「足病医」という専門の医師がいる米国への留学をきっかけに、「日本にも足病という文化を根付かせたい」と、足病医を志すようになりました。これまでのキャリアや日本で唯一の足の総合病院である下北沢病院院長としての現在の取り組みについて、お話いただきました。

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体を支える2本の足から人々の健康を守る

―現在取り組んでいることについて教えていただけますか?

2016年に日本初の“足の総合病院”としてリニューアルした下北沢病院で、院長を務めています。

健康を維持する上で根幹となるのは「食事」と「運動」です。運動のもっとも基本的なものが「歩くこと」です。しかし、足に痛みや傷がある状態では、歩くことがままなりません。それでは基本的な運動ができない状態です。つまり、私たちの健康を支えているのは「足」だと言えるのです。そこで当院では、「足から健康を支える」をコンセプトに、病院全体で“足病院”としての機能を備えることを目指しています。

足の病気やけがは、非常に多岐にわたります。たとえば外反母趾、巻き爪、足の痛み、むくみ、血色不良、糖尿病や腎臓病などの病気に起因する足のトラブル。これらはそれぞれ担当する科が異なり、担当科の病院に行っても専門医がいないために対応できない場合もあります。

そこで当院では、整形外科や血管外科、形成外科など各分野の医師や、足の専門知識を備えた看護師、義肢装具士、リハビリテーション部門、糖尿病専門医などで構成される糖尿病センターなどと連携しながら治療にあたる、「チーム医療」を基礎としたシステムを整えました。何らかの足のトラブルに悩んでいる患者は、まず当院に来てもらえれば必要な診断・治療が受けられるかたちを理想としています。

―幅広く足のケアしていこうということですね。そうはいってもやはり各先生方の専門は異なると思います。病院全体でレベルの均質化を図るためにどのような取り組みをされているのでしょうか?

最初の1年間で整形外科の先生を中心に毎日座学を実施し、情報共有を図りました。また、各科の情報を出し合ってポケットマニュアルのようなものを作成し、外来に役立てています。現在も、毎週月曜日にカンファレンスを行うなど、情報共有を徹底しています。米国の足病学の教科書を毎週交替で1章ずつ翻訳して勉強しながら、日本における足病学の基礎を作ることも実践していますね。

あとは、院内での取り組みではありませんが、足病という考え日本に根付かせたいという思いから、地域啓発も積極的に行っています。

―足病の地域啓発では、具体的にどのようなことをしているのですか?

足が悪い方、足にトラブルのある方は、治療を必要としていても自分で歩いて医療機関に通うことができないケースが多くあります。そのため足病の分野では、地域と連携していくことが非常に重要です。

そのための施策の一環として、訪問看護師や介護士、セラピストといった医療関係者を対象に、足病やフットケアに関する医学的に正しい知識を提供することを目的とした「足の番人プロジェクト」を実施しています。

フットケアは現在でも足病に比べれば浸透している考えですが、医学的観点からのアプローチはまだまだ足りていません。だからこそ、フットケアに関わる1人でも多くの方たちに、講習を通して、医療的な側面から足のトラブルに関わる知識を持ってほしい。そして、地域の人々の足を守る“番人”としての役割を担ってもらうことを目指しています。

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PROFILE

菊池 守

下北沢病院

菊池 守

医療法人社団青泉会下北沢病院院長
2000年大阪大学医学部卒業。香川大学医学部形成外科助手、大阪大医学部形成外科助手を経て2011年からベルギー・ゲント大学、米国・ジョージタウン大学留学。帰国後、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授等を経て、2016年から現職。

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