INTERVIEW
竹富島の取り組みを予防医学のモデルにする
過去に常勤医不在の時期が何度かあった沖縄県八重山諸島の1つ、竹富島。この島に2015年、離島医療に携わりたいと医師になった石橋興介先生が赴任しました。石橋先生は、島民を巻き込んで「ぱいぬ島健康プラン21」というプロジェクトを通して、さまざまな活動をしてきました。このプロジェクトは厚生労働省が主催する「健康寿命をのばそう!アワード」の生活習慣病予防分野で厚生労働省大臣最優秀賞を受賞。どのような経緯で「ぱいぬ島健康プラン21」を進めてきたのか、そして今後の展望について伺いました。
2015年に竹富町立竹富診療所に赴任してきから関わってきたプロジェクト「ぱいぬ島健康プラン21」が、2017年11月に厚生労働省主催「第6回 健康寿命をのばそう!アワード」の生活習慣病予防分野で、厚生労働大臣最優秀賞を受賞しました。「ぱいぬ島健康プラン21」は、町役場や公民館などと一緒に生活習慣病の予防を目指し、子どもから高齢者まで世代を問わず巻き込んで多数の取り組みを企画・実施するプロジェクトです。評価されたことで、竹富島での予防医学の効果が少し現れてきたと思い、嬉しく思います。
赴任して最初に驚いたのが、脳心血管イベントの多さでした。竹富島の人口は約350人。それなのに、赴任後1年で心血管イベントが7件もありました。これは問題だと思い、原因を探ってみたのです。
すると、脳心血管イベントを起こす動脈硬化の危険因子である高血圧症・脂質異常症・糖尿病を患っている人数と年代別分布を調べたら、高血圧症61人、脂質異常症42人、糖尿病17人、このうち2つの危険因子を持っている方は27人、3つ持っている方は17人いました。人口から未成年を除いた母数を考えると、いかに割合が高いか分かると思います。さらに竹富町は、亡くなる男性の3人に1人が65歳未満だったのです。
また、外来/入院の医療費用割合を調べたら、外来97%に対して入院3%でした。ところが費用金額をみると、医療費の半額が入院費に使われていることが分かったのです。このことから、普段、検診や初期の段階での受診をせずに重症化してから医療機関を受診しているのだろうと予測できました。
竹富島では、高齢者は健康なのに若い世代の生活習慣が著しく悪く、予防や早期治療もできていないということが分かったのです。加えて私が赴任当時は、隣の石垣島の地域拠点病院に脳外科医と心臓血管外科医が不在でした。救急医療体制も不十分な状況にある離島で必要なことは何か――それはやはり、予防医療だと考えました。そこで、もともと島で取り組まれていたものの形骸化していた「ぱいぬ島健康プラン21」の再構築に着手し始めたのです。
PROFILE
竹富町立竹富診療所
石橋 興介
竹富町立竹富診療所
福岡県出身。岩手医科大学を卒業後、沖縄赤十字病院にて臨床研修を修了。その後福岡県内の医療機関に勤務していたが、2015年4月に竹富町立竹富診療所に赴任、2018年6月より岩手医科大学 医学部 救急・災害・総合医学講座 総合診療医学分野の非常勤講師を兼任、現在に至る。赴任後から取り組んでいた「ぱいぬ島健康プラン21」が2017年11月、厚生労働省主催「第6回 健康寿命をのばそう!アワード」の生活習慣病予防分野で、厚生労働大臣最優秀賞を受賞した。