病院にかかったときに必ず聞くべき2つのこと
記事
みなさまのなかで病院を受診したことがない方はそれほど多くないはずです。医師の診察を受けて、薬を処方され、帰宅する。その間に「何か質問はありますか?」と聞かれて困ったことはないでしょうか。実は、このときに必ず確認していただきたいことがあるのです。
「薬の飲み方?」「診断はなに?」それも大事なことだと思いますが、意外に気にされていないことがあります。それは、「どうなったらもう一度来たほうがいいのか」「この先予想されるコースはどういったものなのか」ということです。
熱は続くのか。痛みは移動するのか。各々の病気には一般的な経過があります。しかし比較的初期に受診した場合は、まだ症状がそろっていなかったり、症状が軽かったりすることがあり、正確な診断を下すのは難しいことがしばしばあります。
熱が出てすぐに受診した場合を考えてみましょう。発熱の原因を考えるときに医師が重要視しているのは、発熱以外の症状です。しかし、発症直後ではそういった症状がそろっておらず、発熱しかみられないこともしばしばです。
また、嘔吐もよくある主訴ですが、腸炎(いわゆるおなかの風邪)なのかどうかは、下痢もない段階ではなかなか判断できません。その時点では虫垂炎(盲腸)の可能性も十分考えられます。医師と会って診察を受けるその瞬間は経過の一断面でしかないため、医師の診断は多くの不確実性を伴っているのです。
このようなときに医師は緊急性のある疾患(すぐに医療的な介入が必要な病気)でないことを確認し、経過観察とすることがあります(場合によっては暫定診断を下します)。その際も医師の頭の中には「普通ならこういう経過だな」「こういう経過になったら困るな」というモデルがあるのです。
ところがそのときに「次にどうなったらもう一度来たほうがいいのか」「今後どうなっていくと予想されるのか」を聞き忘れると大変です。熱が1日続いたらもう一度かかるべきなのか、それとも3日続いたら行けばいいのか。下痢が出るのは心配のない経過なのか。予想される経過がわからなければいろいろ心配になってしまいますよね。
帰宅後の症状が予測される経過の範囲内であれば、安心できるのではないかと思います。医師側の視点からも、こうなったら来てほしいというタイミングで来ていただければこれ以上安心なことはありません。当院の救急外来では、帰宅時にそういった注意書きをまとめた帰宅指示書というものをできるだけ渡すようにして、双方が不安にならないようにしています。
忙しい外来でなかなか質問する時間がない、何を聞いていいのか困ってしまうという方も、「どうなったらもう一度来たほうがいいのか」「この先どうなっていくことが予想されるのか」だけは聞くようにしてはいかがでしょうか。
医師プロフィール
舩越 拓(ふなこし ひらく) 救急科
2005年千葉大学卒業。初期研修終了後、総合診療と救急医学を研鑽し、現在は東京ベイ・浦安市川医療センターの救急科で臨床と医学教育に携わる。「地域密着・世界標準」をスローガンに断らない全科横断的な対応が可能なER型救急医療を展開中。
医学博士(臨床推論学)、総合内科専門医、救急専門医