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IT機器が子どもたちの「育ちの時間」を奪っている

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今や0歳児までもがスマートフォンを使用しています。IT機器の使用が小中高生の睡眠時間を奪い、自己肯定感に影響しているという調査結果がありますが、乳幼児への影響も危惧しなければなりません。

 

「子どもがスマートフォンを使用することがありますか?」というアンケートが、2014年1月にインターネット上で行われました(https://ssl.interspace.ne.jp/press/387.html)。有効回答数582件のデータではありますが、1歳児の74%、2歳児の85%がスマートフォンを使用していると答えています。「使用頻度」については、29%が「ほぼ毎日」、23%が「週に2~3回程度」、使用時間については、「数分」が45%、「10~30分」が39%、「どのように利用しているか」では、「YouTube等の動画視聴」が最も多いという結果でした。

そして驚くことに、0歳児の24%もスマートフォンを使用していることが示されています。私も駅のホームのバギーの中でYouTubeを見ているおそらく0歳児が、電車に乗る際にお母さまと思われる方(この方はそれまで別のスマホを見ていたのですが)にスマホを取り上げられるや否や大騒ぎを始めた場面に出くわしたこともあります。このような光景は今や決して珍しい光景ではなくなっていると思います。現在はさらにこれらの数字が高くなっているのではないかと心配です。

だっこひもで赤ちゃんを前抱きにしているお母さんがスマホに夢中、という光景にもよく出くわします。せっかく赤ちゃんのお顔が近くにあるのにもったいないな、と感じるのは私だけでしょうか? スティーブ・ジョブズや川島隆太教授がご自身のお子さんにIT機器の使用やゲーム使用を制限しているというのは有名な話ですし、Googleのシュミット会長は母校の卒業式で卒業生に「毎日1時間、スマホをOFFにして会話を大切にしよう」とのメッセージを送っています。「テクノロジーは単なる道具であり、テクノロジーにコントロールされてはいけない。1日1時間スマホの電源を切って、生身の人間と話をしよう。結局人生で大切なのは、そうやってできた友達だから」 

IT機器の使用が小中高生の睡眠時間を奪い、自己肯定感等に影響しているというデータを文部科学省も公表していますが(http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/__icsFiles/afieldfile/2015/04/30/1357460_01_1_1.pdf)、就学前の子どもたちへの影響も危惧しなければなりません。ところが、このように書くとよく言われます。「IT機器が子どもに悪影響を及ぼすというデータはあるのでしょうか?」

NPO法人子どもとメディアの清川輝基代表理事は「データが出てからでは遅すぎる。危険可能性で議論を」と主張されています。神山も同意します。

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医師プロフィール

神山 潤 小児科

公益社団法人地域医療振興協会東京ベイ浦安市川医療センター CEO(管理者) 
昭和56年東京医科歯科大学医学部卒、平成12年同大学大学院助教授(小児科)、平成16年東京北社会保険病院副院長、平成20年同院長、平成21年4月現職。公益社団法人地域医療振興協会理事、日本子ども健康科学会理事、日本小児神経学会評議員、日本睡眠学会理事。主な著書「睡眠の生理と臨床」(診断と治療社)、「子どもの睡眠」(芽ばえ社)、「夜ふかしの脳科学」(中公ラクレ新書)、「ねむりのはなし」(共訳、福音館)、「ねむり学入門」(新曜社)、睡眠関連病態(監修、中山書店)、小児科Wisdom Books子どもの睡眠外来(中山書店)「四快(よんかい)のすすめ」(編、新曜社)、「赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド」(監修、かんき出版)、「イラストでわかる! 赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド 」(監修、かんき出版)、「しらべよう!実行しよう!よいすいみん1-3」(監修、岩崎書店、こどもくらぶ編集)等。

神山 潤
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